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ここに注目 - イネゲノムと未来 - 未来を切り拓くお米のチカラ - 新農業展開ゲノムプロジェクト

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ここに注目

「コシヒカリ」の全ゲノム塩基配列解読
-日本のおコメの起源と変遷が明らかに-

2010年6月30日

日本のイネの品種改良には150年の歴史があり、その間に多くの品種が育成され、新たな品種に置き換わりながら今日に至っています。1956年に育成された「コシヒカリ」は開発から既に半世紀が経過した品種ですが、日本人に長く愛され、30年に亘って日本一の栽培面積と生産量を維持しています。「コシヒカリ」の持つ遺伝子の特徴を理解することは、日本に適したイネ品種を効率よく育成する上で極めて重要です。

私たちは、従来の数千倍の解読速度を持つ新型の塩基配列解析装置を用いて、重複した部分を含む約59億塩基対の「コシヒカリ」塩基配列を明らかにし、これと既にイネゲノム解読国際コンソーシアムが解読した「日本晴」の塩基配列(約3億8千万塩基対)を照合することによって、イネの全ゲノム塩基配列の約80%にあたる3億600万塩基対の「コシヒカリ」ゲノム塩基配列を決定しました。これにより、これまで見つけ出すことが困難であった遺伝的に近縁な日本のイネ品種同士の一塩基多型(SNP) ※1 を大量に検出することができるようになり、「日本晴」と「コシヒカリ」の塩基配列の間には67,051個のSNPが存在することを明らかにしました(図1)。

また、この情報をもとに開発したSNPタイピングアレイという技術を用いて、日本の品種改良の歴史において重要な151品種についてゲノム構成を詳細に調査しました。その結果、「コシヒカリ」は「朝日」、「亀の尾4号」、「愛国」を含む6種の有名な在来品種 ※2 からまとまったゲノム領域を受け継いでいることがわかりました。また、いずれも「コシヒカリ」を親に持つ「あきたこまち」と「ひとめぼれ」ではゲノムの80%、「ヒノヒカリ」では60%が「コシヒカリ」と同じであることが明らかとなりました。さらに、「コシヒカリ」も含めたこれら4品種(日本の栽培面積と生産量の65%を占める)が共通に保有し、在来品種 ※2 から受け継がれているゲノム領域が18か所見出されました(図2)。

「コシヒカリ」のゲノム塩基配列が明らかになったことで、ゲノムに刻まれた品種改良の歴史を浮かび上がらせることに成功しました。今回の研究手法および得られた情報は、日本のイネの違いを決める遺伝子の特定や機能解析、そして品種改良の飛躍的な効率化に貢献すると期待できます。

【語句の解説】
1.一塩基多型: 複数の品種の同じゲノム領域のDNAを調べたときに、塩基配列がほとんど同じで一つの塩基だけ異なっていること。
2.在来品種: 近代的な品種改良が行われる以前から栽培されていた品種。

山本 敏央

山本 敏央 (やまもと としお)

1967年生。愛知県出身。北海道大学大学院農学研究科修士課程修了。日本たばこ産業(株)、(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパンを経て、2006年1月より農業生物資源研究所、同年4月より同QTLゲノム育種研究センター主任研究員。

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