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ここに注目 - イネゲノムと未来 - 未来を切り拓くお米のチカラ - 新農業展開ゲノムプロジェクト

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ここに注目

オオムギの花が開かなくなる遺伝子の発見
-病害回避へ活用-

2010年7月23日

オオムギや、コムギ、イネなどの穀物ではひとつの花の中におしべとめしべの両方を生じて、その間で受粉することにより種子ができます。つまり自家受粉です。自家受粉性作物ではこのように花の内部で受精するため、必ずしも開花を必要としないのですが、普通は開花したときに受粉します。このため開花によって病原菌が侵入しやすくなることや、おしべを花の外に出して花粉をとばすことによる予期しない交雑が問題となっていました。

オオムギには花が開かないまま受粉する品種がまれにあります(図1)。今回私たちはこのような品種がもつ花の開閉を決める遺伝子cly1の同定に成功し、開花しない品種と開花する品種の違いはこの遺伝子の中の1塩基の違いが原因であることを突き止めました。この1塩基の違いが見つかった箇所はcly1遺伝子が働く際に重要な調節をうけることが予想される部分であり、この部分が変化することによりcly1の働きが変化すると考えられます(図2)。この塩基が変化していない野生型の遺伝子を持つ品種は開花の時に花のパーツである鱗被(りんぴ)が肥大することにより、中から外頴(がいえい)と内頴(ないえい)を外へ押し出すことによって、機械的に開花します(図1)。

今回の成果によりイネ科植物の花が開く際の仕組みを解く手がかりが得られました。また、cly1は植物が共通して持っている遺伝子であることから、花を形作る仕組みを明らかにすることが出来ると考えられます。さらに、cly1の働きを調節している仕組みを明らかにすることにより、病害にかかりにくい作物の作出や新しい採種技術の開発につなげられると期待できます。

小松田 隆夫

小松田 隆夫 (こまつだ たかお)

岩手大学農学研究科修了、1985年より農業生物資源研究所に所属、1991年東北大学農学研究科より学位授与、2006年より上級研究員、2008年より千葉大学客員教授

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