国立研究開発法人 農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
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QⅠ-9 | これまでの品種改良と遺伝子組換え技術を利用した品種改良では、どの点が異なるのでしょうか? |

遺伝子組換え技術によらない品種改良法(育種技術)としては多くの方法があります。 現在、私たちが目にする美味しくて収量の高い農作物や、多種多様な色や形の園芸植物の多くは、そのような品種改良の産物です。 育種技術の一つである交配育種法のステップは、次のような手順を踏みます。
ⅰ | 改良したい元品種と、目的の形質を持ち交配可能な系統を遺伝資源から探索する。 | ||
ⅱ | 元品種と、目的の形質を持つ系統とを交配し、後代を増やす。 | ||
ⅲ | 後代の中から、目的の形質を持つ個体を選抜する。 | ||
ⅳ | 元品種がもともと持っている有用な特性(収量や良食味など)を持ちながら、新しく目的とする形質をもつ個体を選抜する。このとき、必要に応じて、得られている後代に元品種を繰り返し交配(戻し交配)することもある。 | ||
ⅴ | 何世代かにわたって、目的の形質が安定的に伝わっていることを確認する。 |
有用な遺伝資源がない場合は、放射線を照射するなどにより突然変異を誘発して、目的の形質を持つものを作ることもあります。
従来の育種技術による品種改良でも、遺伝子組換え技術による品種改良においても、改良前の元品種と改良後の新品種を比較すると、遺伝的な変化が起きている点は同じです。 すなわち、ゲノムに含まれる遺伝子や、その他の遺伝情報は、元品種と新品種で変化しています。
従来の育種技術では、有用な形質を与えている遺伝子がわからなくても、品種改良を行えます。一方で、遺伝子組換え技術を用いる場合は、有用な形質を与えている遺伝子がわかっていることが必要です。
従来の交雑育種技術を用いた場合、改良したい元品種と交配可能な遺伝資源しか使えませんが、遺伝子組換え技術を用いる場合、全生物の遺伝子を利用することが可能です。
確実に有効な性質を示す遺伝子を取り出すことは必ずしも容易ではないことや、遺伝子組換え生物の利用には安全性評価が必要になり、費用と時間がかかること、 国民の理解が必ずしも十分に進んでいないと言われ普及が難しいことなどが、現時点では、遺伝子組換え技術を用いた品種改良にとって課題になる点です。