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QⅧ-1 遺伝子組換え農作物と非遺伝子組換え農作物や有機農業を共存させるために欧州で考えられている「共存法」について教えてください。

 「共存法」とは、EUの農業分野において、遺伝子組換え農作物、慣行農業、有機農業の3者が互いに共存でき、生産者が各々の栽培手法を選択できるためのルールを指しています。 一般に「共存(Coexistence)」と呼ばれています。 2003年にガイドラインが出され、2010年には新たなガイドラインが提案されました。

 遺伝子組換え農作物・食品に懸念を持つ人が多いEU域内においても、栽培や販売を認可された遺伝子組換え農作物の種類が徐々に増えています。 これにより、遺伝子組換え農作物を導入する農家が増加することが予測され、遺伝子組換え農作物と他の作物を共存しながらどのように栽培するかという問題が生じました。

 そこで、EUでは共存方策の検討が行われ、2003年(平成15年)7月に「遺伝子組換え作物と慣行・有機農業との共存に関するガイドライン」∗1が策定されました。 このガイドラインは、欧州では遺伝子組換え農作物、慣行農業、有機農業のいずれの農業も排除されてはならないこと、遺伝子組換え農作物と非遺伝子組換え農作物との混入によって発生する経済的損失の発生を最小限にすることなどを目的としています。

 共存のための手法は各加盟国が策定・実施するべきものとされており、これを受け、2010年までにドイツ、デンマークなど15 ヶ国で共存のための法律などが整備されました。それらの主な内容は、加盟国によって異なりますが、以下のようなものです。

交雑・混入防止措置の確保:栽培の許可制、ほ場の登録制、一定の遠隔距離の確保、GAP(Good Agricultural Practice)の遵守、分別管理の徹底など
交雑・混入により損害が発生した場合の補償:補償基金の設立、遺伝子組換え農作物を栽培する農家の責任など

 その後、2010年には、「遺伝子組み換え作物と従来の作物や有機栽培作物との共存に関する新勧告」を提案しました。共存に関する新勧告は、各加盟国がその地方や地域、国特有の条件を考慮して共存措置を採択できるよう、より柔軟な対応を可能にしています∗2

参考; ∗1COMMISSION RECOMMENDATION of 23 July 2003 on guidelines for the development of national strategies and best practices to ensure the co-existence of genetically modified crops with conventional and organic farming(2003/556/EC)
∗2GMOs: Member States to be given full responsibility on cultivation in their territories
(日本語)遺伝子組み換え作物:国内での栽培に関する全権限を加盟国に付与