国立研究開発法人農業生物資源研究所 遺伝子組換え研究センター
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QⅧ-21 | 『遺伝子組換えダイズを投与したラットの子供の死亡率が高く成長阻害が見られた』という研究結果が報道されていましたが、その事実関係を教えてください。 |

ロシア科学アカデミーのイリーナ・エルマコバ(Irina Ermakova)博士は2005年10月、ロシア遺伝子組換えシンポジウムにおいて、「遺伝子組換えダイズ(除草剤耐性)をラットに食べさせたところ、生まれた仔ラットは生後3週間で過半数(55.6%)が死亡し、成長も遅かった。」と発表しました。
しかし、英国食品基準庁(FSA)から「この実験からは、いかなる科学的で客観的な結論も引き出すことはできない」との声明が出された∗1上に、複数の機関や専門家から下記のような問題点が指摘されました。
ⅰ | 得られたデータのばらつきが大きく、飼料の与え方や飼育方法のずさんさが影響して生育不良となった可能性が高い。 | ||
ⅱ | 安全性を評価する国際的なガイドラインなどに沿った試験方法ではない。 | ||
ⅲ | 動物の数が少なすぎて、なんらかの結論を導き出せるものではない。 | ||
ⅳ | 仔ラットを適切に選抜しておらず、栄養面などの問題で発育不良の原因となった可能性もある。 | ||
ⅴ | 遺伝子組換えダイズを食べていないグループでも、生育不良が多く見られる。飼料の成分自体に問題があり、発育不良となった可能性がある。 |
以上の問題点により、エルマコバ博士の実験は、遺伝子組換えダイズの安全性について科学的に検証したとはいえない、とされています。
日本の厚生労働省と農林水産省も、わが国では、全ての遺伝子組換え食品について、食品安全委員会において安全性評価が行われており、遺伝子組換えダイズを食する場合でも問題はないとしています。
遺伝子組換え食品の安全性評価において、慢性毒性試験が行われてないことが指摘されることがありますが、東京都健康安全研究センターが、長期的な影響や次世代への影響を見るために、ラットのほぼ一生に相当する104週間(2年間)の投与試験と、マウスを用いた生殖試験(次世代試験)を行っています。
その結果、遺伝子組換えダイズ投与群と非遺伝子組換えダイズ投与群の間に統計学的に有意な差は見られないと報告しています。∗2
参考; | ∗1ACNFP statement on the effect of GM soya on newborn rats(2005)(英国食品基準庁(FSA) 新規食品・加工諮問委員会(ACNFP)のサイトへ) |
∗2東京都健康安全研究センター「くらしの健康 第8号」(2005)、 吉田誠二ら(2002) 東京衛研年報 53;274-277 |