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カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)栽培品種
カーネーション(Dianthus caryophyllus L.)は、日本だけでなく世界的にみても、キク、バラと並んで生産量の多い、主要な花きの一つです。
我が国のカーネーション営利生産は、1909年に東京中野の澤田氏が栽培を始めたのが始まりで、100年以上の歴史を有します。1925年には犬塚卓一氏が、アメリカの品種を多数持ち帰ると共にアメリカ式の大規模な温室を東京郊外の多摩川沿い(現在の大田区田園調布4〜5丁目付近)に建て、カーネーション栽培を始めました。この地は「玉川温室村」と呼ばれ、日本の近代施設花き園芸発祥の地として知られています。
第2次世界大戦によりカーネーションの生産は皆無となりましたが、戦後は急速に作付面積が増加しました。ウイルス病、立枯性土壌病害の被害により生産が停滞した時期もありましたが、茎頂培養による無病苗の利用、土壌消毒の導入等により生産が安定化しました。5月の第2日曜日の「母の日」にはカーネーションを贈ることが全国的に定着し、消費の拡大に結びつきました。1990年に作付面積が616haとピークに達した後、最近では国内での生産量は減少傾向が続き、コロンビア、中国などからの切り花輸入が増加しています。2015年の日本での作付面積は318ha、出荷量は2億7,090万本です。
現在のカーネーションは交雑種であり、その基礎となっているのは、原産地不明ですが、シシリー島、南ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアなどの地中海沿岸で長く栽培され、自生化してきたD. caryophyllus です。この原種に、セキチク(D. chinensis L.)など数種の野生種が交雑されて今日のカーネーションが育成されたと推定されています。しかし、その詳細な育成過程については明らかではありません。
カーネーションの品種改良は16世紀初頭からはじめられ、17世紀の中頃までに赤、白、ピンク、黄、紫などの基本色が揃い、絞り、覆輪、八重の花も出現しました。茎のしっかりした切り花用ツリーカーネーションの育種がはじまったのは、19世紀に入ってからです。1840年に、フランスのダルメ(M. Dalmais)によって四季咲き性品種‘アティム’がはじめて育成されました。その後、育種の中心地はアメリカに移り、1939年にアメリカで作出された‘ウイリアムシム’を親として枝変わりにより300品種を越えるシム系品種群が育成されました。1960年代より中輪房咲きのスプレー系品種や、萎凋病抵抗性の導入が大きな育種目標とされた地中海系と称される交雑品種群がヨーロッパで育成され、現在の切り花カーネーション品種の中心となっています。
野菜花き研究部門では、遺伝資源として約300点のカーネーション栽培品種を維持保管しています。ここではその一部をご紹介します。
