鳥害対策 | ![]() |
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<目次> | |||||||
❖ はじめに ❖ 農家・圃場単位の防除対策 ❖ 地域単位の防除対策 ❖ 結論 ❖ 鳥についてのよくある誤解 ❖ 鳥種別の生態と防除の概要 ❖ 資料編(研修会資料等) <以下は別ページ> ❖ 文献資料 ❖ 参考図書 ❖ よくある質問(FAQ) |
機器 | コメント |
爆音器 | 農地と住居が混在している日本ではプロパンガスによる比較的小音量のものが用いられているが、それでも騒音で苦情が来る。鳥の慣れも早い。 |
複合型爆音器 | 爆発音とともに板や旗が打ちあがって落ちてくるもの。商品名ラゾーミサイル、ドンピカなど。5万円程度と比較的高価だが、キジバトには比較的効果が高い。 |
シェルクラッカー | 鉄砲から発射され、上空で炸裂する。小型ピストルタイプもある。海外ではよく使われているようであるが、日本での使用例は空港などに限られる。実弾による駆除と併用すると効果が高い。煙火・花火でも同様の効果がある。 |
防鳥テープ | キラキラと光るテープを作物の上に張り巡らす。防雀テープともいう。鳥が警戒して避けることを期待したもの。あまり効果は期待できないが、安価で気楽に使える。 |
吹き流し | 長いポリマルチを用いたものは、夜行性のヒドリガモによる麦への食害対策に有効だったという報告がある。 |
磁力 | 我が国ではブームであるが、効果は疑問。海外の試験でも、ムクドリの巣箱に磁石をセットしても何の影響もないなど、否定的な結果が出ている。ヒヨドリを用いた試験でも効果はなかった。 活動記録:「日本鳥学会誌」に磁石による忌避効果はみられないことを調べた論文を執筆もご覧ください。 |
超音波 | 鳥に超音波は聞こえない。 |
ディストレスコール | 鳥の悲鳴のことで、遭難声ともいう。市販の音声防鳥機器にもっともよく使われている。ねぐらからの追い払いには有効だが、農地ではすぐに慣れを生じることが多い。ディストレスコールをまねた合成音も用いられている。 |
目玉模様 | 昆虫の目玉模様を拡大、誇張した風船などが用いられているが、すぐに慣れを生じる。そもそも鳥が「目玉」とだまされて驚くのかどうかにも疑問がある。 |
マネキンやかかし | 人に似ているほど効果が高いが、やはり慣れを生じる。動作を加えると効果が高まる。こまめに場所や向きを変えることも大事。キジバトに比較的有効。 |
鳥の死体(模型含む) | カラスなどの鳥の死体をぶらさげるもので、昔から各地で行われている。鳥が仲間の死体を見て危険を察知するかどうかは不明。効果があるという人も多いが、やはり慣れを生じる。 |
有効物質(一般名) | 商品名 | 対象作物 | 対象鳥種 | 処理 | 備考 |
チウラム | アンレス | 稲 | スズメ | 種籾に浸漬処理 | もともと殺菌剤。残効性が長く,鳥獣への毒性は低い。絶対的効果は期待できない。魚毒性が強い(C類)。フロアブル剤は種子処理作業中に薬剤が飛ばない。キヒゲンは旧名キヒゲンセット、キヒゲンR-2フロアブルは、旧製品キヒゲンディーフロアブル。 |
キヒゲン | だいず・えだまめ | ハト | 種子に粉衣処理 | ||
とうもろこし・飼料用とうもろこし | カラス・キジ・ハト | ||||
キヒゲンR-2フロアブル | 稲 | スズメ・ハト・キジバト・カラス・カワラヒワ | 種子に塗沫処理 | ||
大麦・小麦・麦類 | ハト・キジ・スズメ | ||||
いんげんまめ・えんどうまめ | ハト・カラス・キジバト | ||||
だいず・えだまめ・あずき・豆類(種実・未成熟) | ハト・カラス | ||||
ひまわり | カラス・ムクドリ・ハト | ||||
雑穀類・とうもろこし・飼料用とうもろこし・ソルガム | カラス・キジ・ハト・キジバト・ムクドリ・スズメ | ||||
チアメトキサム フルジオキソニル メタラキシルM |
クルーザーMAXX | だいず・えだまめ | ハト、キジバト | 種子に塗沫処理 | もともと殺虫殺菌剤。 |
項目 | 単位 | 値の例 | 説明 |
(栽培条件、作物、被害に関する情報) | |||
10a当たり収量 | kg | 500 | 鳥害がない場合の予測収量 |
単価 | 円 | 250 | 生産物の売価 |
被害率 | 割合 | 0.2 | 何も鳥害対策をしていない場合のある時点での被害率 |
相対減収率 | 割合 | 0.8 | ある時点での被害率と最終減収率との関係 |
減収率 | 割合 | 0.16 | 被害率×相対減収率 |
被害額 | 円 | 20,000 | 10a当たりの年間被害額。反収×単価×減収率 |
(防鳥資材に関する情報) | |||
機材単価 | 円 | 30,000 | 機材1台当たりの購入費(負担額) |
耐用年数 | 年 | 4 | |
運用費単価 | 円 | 0 | 1年1台当たりの燃料費、メンテナンス・修理費、手間賃など |
機材必要数 | 組・台 | 2 | 10a当たりに必要な数 |
機材費 | 円 | 15,000 | 10a当たりの年間コスト |
機材の効果 | 割合 | 0.2 | 無対策の場合に比べて被害率をどれだけ減らせるか |
対策時被害額 | 円 | 4,000 | 機材を導入した場合の予測被害額.無対策時の被害額×機材の効果 |
対策総コスト | 円 | 19,000 | 機材費+対策時被害額 |
(結論) | |||
費用対効果 | 割合 | 1.05 | 被害額÷対策総コスト。1を上回れば対策導入の価値あり |
増益 | 円 | 1,000 | 機材導入による10a当たりの増益分。プラスなら導入の価値あり |
(3)状況に応じた対策(圃場・農家レベル)
大規模に商品作物を作っているのか、もっぱら自家消費用の小規模な圃場かでは自ずと対策が違います。万能薬はありません。大規模な場合には、どちらかというと耕種的手法を中心に、小規模な場合には物理的遮断(防鳥網)や個人的な創意工夫による追い払いを中心に考えましょう。
(4)駆除によって緊張関係を維持する
被害が常態化している地域では、鳥と人との緊張関係が失われていることが多いようです。そうならないためには、正式に許可を取って銃器による有害鳥獣駆除も適切に実施しましょう。
(5)鳥害を完全に防ごうとはしない:補償制度でカバーを
鳥は広域で移動するので、農家単位での被害対策(追い払い)と広域での被害軽減は両立しにくいものです。地域としてはたいした被害ではなくても、特定の農家が甚大な被害を被ることがあります。いたずらに防鳥機器にコストをかけるよりも、被害が集中したところに補償した方が安上がり、という発想も必要でしょう。ガン類やツル類といった大型の保護鳥渡来地では自治体が独自の補償制度を設ける例も出てきています。
なお、共済制度については全国農業共済協会をご参照ください。
(6)地域に応じた農業(地域・自治体レベル)
特定の鳥害が多発し、耕種的な工夫で防除できないなら、それはその地域に向かない作物という考え方も必要です。例えば、カルガモが多い河川沿いでは水稲の湛水直播は難しいようです。他の栽培方法や作物を探求します。
ちょっと本当らしい話が信じられやすいようです。だまされないようにしましょう。「誤解」をクリックすると「本当は」が見られます。
誤解:本能的にいやがる刺激を使えば、鳥は慣れない?→本当は:タカやヘビに対する忌避反応はたぶん遺伝的ないしは本能的ですが、偽物はやがて見破ります。 誤解:鳥は人よりも目や耳がいい?→本当は:ふつうの鳥は視覚も聴覚もせいぜい人と同程度です。ただし、多くの鳥は人には見えない近紫外線 (UV-A) を感知できます。 誤解:鳥が嫌う色がある?→本当は:鳥は色を識別できますが、「本能的に」嫌う色はありません。鳥によっては緑色っぽいものより赤いものを好むといったことはあります。しかし、緑色の餌がおいしいことがわかればちゃんとそれを学習します。 誤解:鳥は磁力で方位を決めているから、磁石で方向感覚を失う?→本当は:ハトや小鳥などは地磁気で方位がわかります。しかし、地磁気が乱れても視覚や太陽コンパスが使えるかぎりは方向定位や行動には影響しません。 誤解:最近害鳥が多いのは、山の環境が悪くなったせい?→本当は:農業害鳥はもともと里の鳥です。個体数や鳥害が増えているとすれば、むしろ農業や人里の環境変化が原因と考えられます。「山に実のなる木を植えれば鳥は畑から山へ帰ってくれる」ということはありません。山にも木の実を食べる鳥が増えるだけです。ただし、大雪の年などに山の鳥が里へ下りてくるといった現象はあります。 誤解:安価な防鳥機器なら、年間コストは被害額より少ない?→本当は:そういうこともあるでしょう。ただ、大事なことは、1)防鳥対策をしても被害はゼロにはならないので、そのときの被害額も算入することと、2)そもそもある対策をしたときの効果は周りの人・圃場での対策によって違ってしまうこと、です。 誤解:ホームセンターで買ってきた○○でも被害が減った?→本当は:どんな防鳥対策でも、鳥にとっては「怪しい」ので、近くに何もやっていない圃場があれば、一時的にそちらへ行きます。周りが対策をたてたり時間がたてば戻ってきてしまうことも見越して評価しましょう。 誤解:鳥にはなわばりがあるから、うちの圃場で駆除すればしばらく大丈夫?→本当は:たいていの農業害鳥は、皆さんのイメージするようななわばりを持たず、もっぱら群れで生活して広い範囲を飛び回っています。駆除で効果があるとすれば、鳥がその場所を危ないと学習したり、危険に敏感になるためです。 |
鳥種 | バージョン | ファイル | 写真 | 文責 |
カラス類 | 3.6 (2014/6/24) | PDF 539KB | あり | 吉田 |
カモ類 | 3.5 (2021/4/9) | PDF 2.2MB | あり | 吉田 |
ヒヨドリ | 2.1 (2001/12/10) | PDF 326KB | あり | 藤岡 |
スズメ | 4.2 (2023/6/8) | PDF 3.2MB | あり | 山口 |
ムクドリ | 3.3 (2021/2/25) | PDF 1.2MB | あり | 山口 |
ハト類 | 2.1 (2001/12/10) | PDF 167KB | あり | 藤岡 |
資料名 | 発行・提供元 | 年月日 | コメント |
自治体担当者のためのカラス対策マニュアル | 環境省自然環境局で公開 | 2001年10月 | (財)日本野鳥の会が制作したA4版135ページの立派なもので、全国の自治体に配布されました。都市のカラス対策ですが、農業被害についても参考になる情報がいっぱいです。 |
鳥害の図鑑 みんなで考えよう!水稲直播の鳥害回避策 播いた種籾を鳥に食べられないために |
農研機構東北農業研究センター | 2001年 | 農研機構東北農業研究センターが水稲直播における鳥害対策についてまとめたものです。 |
水稲べんモリ直播マニュアル | 農研機構九州沖縄農業研究センター | 2016年 | 農研機構九州沖縄農業研究センターが「べんモリ直播」についてまとめたマニュアルで、鳥害対策にも触れています。 |
カラスに関するQ&A | 東京都環境局 | 2022年更新 | 一般の方からのカラスに関するよくある質問に答える形のQ&Aです。 |