コラム
粒状アーモンドチョコでのノシメマダラメイガの被害と発育
チョコレート製品はチョコレートだけで出来ているとは限りません。たとえば、ナッツとチョコレートは相性がよく、ピーナッツ、マカデミアナッツ、アーモンドが入った製品はたくさんあります。また、チョコレートに、ナッツ類は砕かれて含まれていたり、丸ごと包まれていたりと様々なタイプの製品がみられます。ノシメマダラメイガはこれらナッツの害虫としても知られ、チョコレートよりも短時間で発育し、成虫羽化率も高いことがわかっています。
砕かれたアーモンドが入ったチョコレート製品では、ノシメマダラメイガ幼虫は表面に露出したアーモンドから食害し、アーモンドの入っていないチョコレート製品よりも発育がいいのです(過去のコラム参照)。これは、ナッツを食べた分だけ幼虫発育に好ましい影響が出た結果と推測されます。
アーモンドチョコレートと呼ばれる製品の中には、アーモンド一粒を丸ごと包んだ粒状の製品(長径2.7cm・短径1.7cm)があります。このようなタイプのチョコレート製品に、ノシメマダラメイガが混入し発育したらどうなるでしょうか?ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、砕いた柿の種が入ったミルクチョコレートの3種類の性質の異なった粒状製品について、発育を比べてみました。
容器に粒状アーモンドチョコレート1粒を入れ、孵化から24時間以内の幼虫を1匹放して、28℃・湿度70%の部屋に置き、成虫までの日数を調べました。試験に使った幼虫はチョコの種類毎に20匹です。幼虫の多くは発育途中で死亡し、ホワイトチョコレートでは全く成虫になれませんでした(表1)。柿の種が入ったものが、発育日数が短く、羽化率が高いという結果は予想外でした。柿の種入りミルクチョコレートだけは、表面に光沢剤が塗られておらず、ザラザラとして、孵化幼虫の食い付きがよかったのではないかと考えています。
食害状況をみると、チョコレートを穿孔しアーモンドまで到達した幼虫はいませんでした(チョコレートの層は薄いところで3mm)。それでは、4粒あたり30匹の幼虫を一度に投入したらどうでしょうか?実験結果は、集団でチョコレートをかじっても、内部のアーモンドまでは到達できないことを示しました(表2)。30匹の幼虫は、共食いをして最終的には1匹になりましたが,ミルクチョコレートと柿の種入りミルクチョコレートでは成虫になりませんでした。しかし、ホワイトチョコレートでは成虫になりました。1匹の実験と異なった結果が出た理由は不明ですが、幼虫にとってチョコレートはかなり不安定な食物であり、様々な状況との組み合わせが発育に影響を与えたのでしょう。
粒状アーモンドチョコレート製品にノシメマダラメイガが混入して、幼虫が発育した場合、夏季(28℃前後)では、100日(卵期間含む)程度で成虫になると考えられますが、それ以上かかる場合もあるでしょう。歯切れの悪い結果ですが、そういうものなのだと私は思います。
参考文献
- 宮ノ下明大・今村太郎・古井聡・西田典由(2013) 粒状アーモンドチョコレート製品におけるノシメマダラメイガPlodia interpunctella幼虫の被害と発育.ペストロジー 28: 117-121.
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更新日:2019年02月19日