アグリ・ゲノム研究の総合的な推進 [(旧)食料供給力向上のためのグリーンテクノ計画] ― イネゲノム研究 ―
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組換え体利用型(〜平成18年度)
(略称:大規模機能解明、EF) |
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わが国が主導して行ったイネゲノム解析研究によって、イネ完全長cDNAの整備とイネゲノム完全解読の達成がなされました。このプロジェクトでは、これらの成果を活用して、これまでの手法では困難であったイネで発現している遺伝子とそれらのプロモーターの大規模機能解明を行っています。14年度、15年度はプロモーターの解析を進め、重要なものについては特許化を行いました。16年度からは、完全長cDNAを過剰発現する組換え体イネの大規模作出(1万4千系統を目標)を開始し、表現型の解析から遺伝子機能を特定するプロジェクトが開始されました。重要な機能が特定された遺伝子については特許化を行い、また、遺伝子機能に関する大量のデータについては、データベース化を行っていきます。
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1.達成目標
(1)組換え体を用いた有用遺伝子の大規模機能解明
完全長cDNA、ゲノム塩基配列等の情報を活用し、重要な転写制御領域(プロモーター)を決定し、その解析を拡充して実施する。14年度は50前後、15年度は100前後、16年度は200前後の新規プロモーターについて解析を進める。また、他の手法では機能が明らかにならない遺伝子については、酵母変異体6000系統を活用した相補試験による機能推定研究を拡充推進し、ピックアップされたcDNAを過剰あるいは抑制発現させた組換え体を大量に作出し、遺伝子の機能解明を行う。
(2)組換え体作出関連技術の開発
「遺伝子組換え技術の高度化」を踏まえ、組換え体を用いた有用遺伝子の大規模機能解明を効率よく実施するために、1.高精度遺伝子導入技術の開発、2.効率的組換え体選抜技術の開発、3.発現制御技術の開発を重点的に行う。
2.研究内容
(1)組換え体を用いたイネ有用遺伝子のプロモーターおよび機能に関する解析
a)有用プロモーターや遺伝子に関する情報収集
植物遺伝子関連の先行特許、公知情報などの調査を行い、これらの情報をもとに解析すべきイネ遺伝子プロモーターの選択等を実施する。
b)組換え体を用いた大規模プロモーター解析
調査から選定された遺伝子のプロモーター領域の増幅を実施する。まず構成的発現型あるいは組織特異的発現型のプロモーターについて、レポーター遺伝子への接続およびバイナリーベクターへの導入、アグロバクテリウムを介した超迅速形質転換法によりイネにベクターを導入、得られた形質転換体の発現解析を実施する。15年度以降は種々の誘導的プロモーターも解析の対象とする。
c)組換え体を用いた遺伝子機能解析
種々の機能未知cDNA配列を構成的プロモーターの下流に正逆方向に接続したバイナリーベクターを構築。a)と同様、超迅速形質転換法を用いてイネに遺伝子導入。各形質転換体について表現型を解析し、品種開発に有用な遺伝子については権利化を進める。イネ形質転換体において各プロモーター配列がもたらす遺伝子発現パターンや、導入遺伝子(cDNA)の発現による表現型の変化などから、各プロモーターや遺伝子の実用性や有用性を評価する。
(2)イネ組換え体作出関連技術の開発
a)高精度遺伝子導入技術の開発
DNA相同組換えによる遺伝子改変を目指す。本技術が確立されると、標的遺伝子の破壊や置換による対象遺伝子の機能解析のみならず、ゲノム上の特定領域(標的遺伝子座)を必要最小限だけ組換えた作物の作出が可能となり、安全性に配慮した遺伝子組換え体の実用化への道が開ける。さらに葉緑体DNAの相同組換えによる遺伝子改変を実施し、母性遺伝による遺伝情報伝達を可能とする葉緑体の形質転換技術の開発を目指す。
b)高効率組み換え体選抜技術の開発
植物由来のマーカー遺伝子を種々のプローモーターでドライブし、より効率的で安全性の高い形質転換体選抜系を開発する。また、培養系を介した従来の方法とは異なるイネ形質転換法の開発、すなわち培養系を必要としないin plantaトランスフォーメーション法等の画期的な遺伝子組換え系の確立を目指す。
c)発現制御技術の開発
発現抑制技術としては、最近、植物分野でも脚光を浴びているRNAi法の他、新規の発現抑制系の開発も試みる。発現誘導技術の開発では誘導系自体の開発と共に、同系を活用して遺伝子ファミリーを構成する遺伝子の解析を目指す事とした。また、組織特異的に発現する遺伝子を単離する新規アプローチとして、レーザー光を用いて特定の微細組織を切り出し、そこで発現している遺伝子を特異的に増幅する手法の開発を行う。
これら技術開発の中には概ね確立されている技術もあるが、未だイネにおいては充分確立あるいは活用されていないものもある。そこで、改良を加えることでイネへの適用を可能にし得る技術開発課題と、独創性や新規性は非常に高いがチャレンジングな課題を敢えて共存させた。後者の課題においては計画通りに研究が進行しない場合もあると想定されるが、その場合は進捗状況に応じた軌道修正を行う。
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