平成20年度 研究成果報告
バイオエタノール発酵廃液に含まれる作物生産に有効な成分の把握および圃場還元による有効利用法に関する研究開発
国立大学法人帯広畜産大学

概要
【本課題の目的と取組】
エタノール発酵廃液を圃場還元により有効利用することが可能な技術を開発するために、各種原料の違いによる発酵廃液の成分、濃度及び排出量等の差異を把握し、排出特性を配慮した循環技術を開発する。
課題(1) 各種発酵廃液の含有成分特性の把握
課題(2) 発酵廃液中の有害成分及び有用成分の分離技術の開発
課題(3) 発酵廃液が植物生育や生理活性に及ぼす影響の評価
【供試試料】
財団法人十勝圏振興機構
バイオエタノール製造実証試験プラント(北海道帯広市)
規格外コムギ(Aグレード):平成19年8月24日に採取
ビート糖液(シックジュース):平成19年11月14日に採取
【参考資料】
株式会社りゅうせき
バイオエタノール生産設備(沖縄県宮古島市)
サトウキビ廃糖蜜:平成19年11月7日に採取
株式会社りゅうせき
バイオエタノール生産設備(沖縄県宮古島市)
写真:各種原料および製造工程から排出される蒸留廃液
左は排出された蒸留廃液の原液、右は遠心分離とろ過により固形分を取り除いた液体画分。原料や工程によって廃液の懸濁物質(固形分)量、ろ液の色などが大きく異なることが分かる。
研究紹介
研究成果(1)
エタノール蒸留廃液には植物生育に欠かせない窒素やカリウムなどの多量元素、鉄や亜鉛などの微量元素が比較的多く含まれている
- 原料や製造工程によって廃液中の肥料成分量が大きく異なる
- 固形分を除いたろ液は原液と比べて肥料成分量が少ない
- 原料の性質を反映して廃液中の一部の成分が多い(コムギのN、ビートのNa、廃糖蜜のZnなど)
研究成果(2)
エタノール蒸留廃液に含まれる有機物は易分解性であり、液体中にはカラメル、ペプチド様物質、腐植物質などの着色成分が含まれている


上図:廃液液体画分中の炭素割合
左図:土壌に廃液を添加して30℃で静置培養したときの炭素分解率
- 廃液に含まれる有機物は易分解性であり、家畜ふん尿液肥(スラリー)などと比べても、土壌微生物にとって分解しやすい有機物である
- 液体画分中にはカラメルや腐植物質が溶けており、腐植物質の分子サイズは1500〜7000と比較的小さい
研究成果(3)
エタノール蒸留廃液に含まれる肥料成分は作物(ホウレンソウ)に吸収されて生育に貢献し、作物の生育や品質に悪影響を及ぼさない

- 廃液を施用した分だけ化学肥料を減らしてホウレンソウをポット栽培しても、地上部や地下部の生育は良好であり、廃液の肥料成分が作物に吸収された
- 廃液を施用して栽培したホウレンソウは化学肥料のみで栽培したホウレンソウと同様の抗酸化活性を示し、廃液は作物の品質にも悪影響を及ぼさない
エタノール発酵廃液(蒸留廃液)は肥料成分や易分解性有機物を含む資材として圃場還元により資源循環に貢献できる可能性が極めて高いと考えられる