平成21年度 研究成果報告
バイオマスの熱分解による燃料ガス生産技術の高度化

(独)農研機構 九州沖縄農業研究センター 九州バイオマス利用研究チーム
長崎総合科学大学
積水化学工業株式会社
東京農業大学
研究の成果
木材や稲わらなどからのガス化発電利用やメタノール変換技術が実用化段階にあり、効率のよい技術開発へのブラッシュアップが進行中です。平成21年度からは合成ガスからのエタノール変換も開始しました。また、畜産ふん尿については、原料をペレット加工し、安定的にガス化できる技術が開発されました。
* バイオマスガス化発電・C1化学変換コンバインド高効率システムの実証
* バイオマスガスからの直接エタノール変換システムの開発と実証
* 家畜排せつ物等バイオマスの直接熱分解ガス化によるエネルギー化技術の開発
バイオマスガス化発電・C1化学変換コンバインド プラント
−平成21年度までの成果と現状−
- 各種の草木バイオマス(木質系:杉、ハンノキ、ナラ;草本系:稲わら、バガス、ソルガム 図2)を浮遊外熱式ガス化法(図1)によってガス化し、高品位生成ガスを得ることができた(図3)。
- ガスエンジン発電で50kWクラス最高の発電効率21%を示した。バイオマス1kgで1kW/hの電力を得ることができる。
- 生成ガスはH2とCOが主成分で、化学原料として液体燃料合成に利用できる。通常の8MPa圧力合成を2MPaの低圧多段合成法(各段で生成メタノールを液として採取)によって、低動力・高効率の合成が可能となった。バイオマス2.5kgからメタノール1Lが得られる。
- PSA吸着精製によって、生成ガス中の微量不順成分(H2S,HCL,COS等)が除かれ、市販可能な高純度メタノール製品(図4)が得られた。
- 本プラントの開発はほぼ完成期にあり、250kW規模の実用機展開に入った。
家畜ふん尿堆肥等のガス化・エネルギー利用システムの開発
- バイオマス資源である牛ふんおよび鶏ふん堆肥を熱分解ガス化し、発電と熱利用を行うエネルギー化システムを開発した(図5)。
- 堆肥はペレット化し、ガス化は厚層のダウンフロー方式(材料、空気とも上から下に流れる方式)で、タール発生もなく安定した温度でガス化が可能となった(図6)。ガスの発熱量は平均3,820kJ/N-m3で、ディーゼルエンジンに送り発電する。ガスの冷却熱や発電廃熱により食品残渣を乾燥し、家畜の飼料として利用する。また、燃焼灰はカリ、リン酸肥料として利用できる。
- エネルギー収支は、投入エネルギーに対し発電が25%、熱利用が52.4%で総合熱効率は77.4%になると推定される。
- ペレットの処理規模12.5t/日の場合、設備費は約2.4億円で、売電量は8,200kWh/日、食品残渣約26t/日を8,000円/tで処理できれば収支のとれるエネルギー化プラントとなる。