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バイオ燃料変換技術研究開発

農研機構
バイオマス研究センター
食品総合研究所

平成24年度 研究総括

Blチーム:稲わら変換総合技術の開発

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PDF:稲わら水熱・酵素糖化・エタノール発酵基盤技術の研究開発
1.8MB

図1:ソフトセルロース利活用技術確立事業実施場所
図1 ソフトセルロース利活用技術
確立事業実施場所

・B1チーム(森 勝美、長島 實、美濃輪智朗、澤山茂樹)

 稲わらからの燃料用バイオエタノールの生産は、2007年2月にバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議報告「国産バイオ燃料の大幅な生産拡大」中で、「稲わら、麦わら、もみ殻等の草本系については、畜産用粗飼料、農地還元必要量を考慮し、2030年度にエタノール換算180〜200万キロリットルの国産バイオ燃料生産可能性がある。」と記述され、技術開発の促進が始まった。本プロジェクトはこれに対応した地域バイオマスプロジェクト・変換研究の稲わらを対象とする新規基盤技術の開発と位置付けられる。本テーマはAチームの多様な原料を包括する変換研究プラットフォーム構築に資する繊維質一貫変換技術開発に先行した研究開発実績を有する2研究機関に参画を求め、細菌非増殖依存型エタノール生産リアクター構築、繊維質水熱前処理型変換技術開発を進めた。
 農林水産省では本委託プロジェクト研究とは別に「ソフトセルロース利活用技術確立事業」を推進している。これは稲わらの利用を前提とした資源収集・運搬、燃料製造技術の技術実証を期待するソフトセルロース系原料の利活用技術を広く一般に情報発信する技術確立を期待するものである。2008年度に3モデル地区(北海道、秋田、兵庫県)、2009年度に1モデル地区(千葉県)が追加採択された。原料はいずれも稲わらでからの一貫したモデル事業となっている。4モデル地区の実施場所と規模を図1に示す。変換(製造)工程に関しては、それぞれ独自技術を採用している(表1)。

表1 モデル地区の前処理、糖化、発酵技術
地区 前処理 糖化 発酵
北海道 海道アルカリ前処理 同時糖化発酵
秋田県 微粉砕 水熱糖化 非遺伝子組換酵母・セミバッチ発酵
千葉県 アルカリ蒸解・微粉砕 酵素糖化 C6C5発酵
兵庫県 水熱分解 酵素糖化 非遺伝子組換酵母・バッチ発酵



稲わらからの高効率エタノール生産プロセスの開発(B010)

 本プロジェクト研究の中で、より高効率なエタノール変換を目指して、(財)地球環境産業技術研究機構(RITE)・バイオ研究グループが開発してきた細菌非増殖依存型バイオプロセス(RITEバイオプロセス)を利用した基盤研究開発を行った。本実行課題は平成19〜20年の2年間実施してコリネ型細菌を用いる超高生産性エタノール生産プロセス構築の基礎的検討を終了した。

稲わら水熱・酵素糖化・エタノール発酵基盤技術の研究開発(B020)

図2:研究開発内容
図2 研究開発内容

 前処理、糖化、発酵のトータルプロセスを開発する実行課題である。前処理に関しては、水熱と微粉砕を組み合わせた水熱・メカノケミカル処理により、水熱処理による過分解を避けつつ、微粉砕での消費動力を低減させる技術を、糖化に関しては、オンサイト酵素生産による酵素費用を低減する技術や前処理との適切な組み合わせによる酵素使用量を低減する技術を、発酵に関しては、遺伝子組換酵母を開発してグルコースのような六炭糖だけでなく稲わらに多く含まれるキシロース(五炭糖)も同時に発酵利用する技術を、経済性評価を同時に行いつつ、それぞれ開発するものである。
 水熱処理や微粉砕処理は「ソフトセルロース利活用技術確立事業」の3モデル地区でも採用しており、これらの技術革新が本プロジェクト研究で達成されれば、国内の事業にインパクトが大きいと期待される。



参考資料

  1. 1) 地域環境資源センター(JARUS),(2008-2011),"バイオエタノール通信(1〜7号)."

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