コラム
コクゾウムシはどこから来るのか
「コクゾウムシはどこから来るのですか」と質問されることがあります。私達は日常生活でコクゾウムシを見ることはほとんど無く、確かに不思議です。年配の方は、昔はよくお米に沸いたものだけど、今では見なくなったと言われます。コクゾウムシ減少の理由のひとつは、近年の異物除去技術の進歩にあります。貯蔵された玄米を精米する施設では、玄米に混入している割れた米、変色した米、虫くいのある米、虫自体を、精米するときに様々な方法で除去しているのです。
例えば、色彩選別機を用いることで、お米をひと粒ずつ流しながら、カメラで撮影して瞬時に色を識別し、異物に空気を噴射することではじき除去することが出来ます。その結果、虫や異物のない精米を包装することができ、コクゾウムシは見られなくなったと思われます。

しかし、玄米の貯蔵倉庫や精米所を調べてみると、コクゾウムシがいなくなったわけではありません。私達の研究グループは、2005年から1年間、茨城県の10カ所の玄米貯蔵倉庫で貯穀害虫の発生数を調べました。お米を直接加害する害虫の中で一番多く見られた種類は、コクゾウムシの成虫で、続いてノシメマダラメイガの成虫、イッテンコクガの幼虫の順でした(松阪ら,2009)。現在でもコクゾウムシは玄米の貯蔵倉庫や精米所に生息しており、ここからやって来るのです。

(松阪ら,2009より作図)
玄米貯蔵倉庫でコクゾウムシが多発していれば、産卵された玄米があり、卵や小さな幼虫の入った玄米は、選別機であっても除去することは出来ません。除去されなかったコクゾウムシの入った精米は袋に混入し、時間が経てば成虫が発生します。複数の人が使う無人精米所では、虫に汚染された玄米が精米された後に、別の人が精米すると虫の汚染が広がる可能性があり、注意が必要です。コクゾウムシの混入を減らす最も良い方法は、玄米貯蔵倉庫や精米所での害虫管理をしっかり行い、元から絶つことが重要なのです。
参考文献
- 松阪守・石向稔・坂本新一郎・宮ノ下明大・今村太郎・中北宏 (2009) 家屋害虫 31(1): 27-36.
関連情報
- 図鑑:コクゾウムシ
更新日:2019年02月19日