[ 農業生物資源研究所トップページ ] [ プレスリリースリスト ] 背景最近、短いRNAがガイド分子として働き、複数の蛋白質と共に複合体を形成して、標的メッセンジャーRNA(mRNA)を分解することにより遺伝子発現の抑制を行う機構(RNAサイレンシング機構)が存在することが、様々な生物で報告されています。この複合体に含まれる蛋白質のうち、特に重要なものの1つがアルゴノート(Argonaute(AGO))です。AGO蛋白質は、短いRNA分子と直接結合して、標的とするmRNAを切断する酵素として知られています。AGOは、動植物、線虫、昆虫、酵母など多くの生物で、様々な組織の発生過程や染色体の高次構造の確立に必要であることが知られています。生殖過程に特異的な働きを持つAGO蛋白質の存在は、既に多くの生物で明らかとなっていますが、植物ではこれまで報告がありませんでした。 被子植物の生殖研究は、花器官の発生過程、花粉が雌しべの先端につく受粉、そして受精の過程を中心に展開されてきました。農業的に重要な現象が多く知られているからです。一方、花器官のなかに生殖細胞が作られる初期段階の遺伝子機構は、ほとんど未解明のままです。しかし、生殖細胞形成の初期段階は、受精に必要な全ての装置を生み出す基礎を作る大切な時期です。また、生殖細胞の発生初期過程でも、低温あるいは高温などのストレスを受けると、生殖組織の発生異常が原因で収量が減少するなど、農業的に重要な現象が知られていますが、その原因遺伝子も未解明のままです。 植物の生殖組織は非常に小さく、幾重にも他の組織に包まれているため、生化学的な解析が困難であることも研究が遅れている原因でした。しかし近年、突然変異体を選抜し、その原因遺伝子を特定することが植物でも比較的容易になってきました。さらに、顕微鏡技術の発達により、組織内部の細胞を観察する技術が確立されるに至り、植物の生殖細胞の初期発生過程を分子生物学的に観察することが可能となってきました。 イネは、トウモロコシ、コムギと並ぶ世界の三大穀物であり、日本人の主食としても親しまれる、非常に重要な単子葉植物です。イネゲノム塩基配列の解読は2004年に終了し、イネ研究はポストゲノムと呼ばれる遺伝子機能解析を中心とする時代に突入しています。 [ 農業生物資源研究所トップページ ] [ プレスリリースリスト ] |