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お知らせ 概要 背景 研究手法 研究成果 今後の展開、用語説明 図1、図2 図3、図4

概要

○ 本研究成果のポイント
  • 短いRNAを介したRNAサイレンシング機構に関与するイネMEL1遺伝子を発見
  • 生殖細胞に特異的なRNAサイレンシング機構の存在を、全植物を通じて初めて示唆
  • 低温障害など、農作物の生殖過程に関わる各種障害を克服する基盤となり得る

  大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所は、独立行政法人 農業生物資源研究所との共同プロジェクトで、イネ(Oryza sativa L.)の生殖に特異的な遺伝子発現抑制機構に関与する新しい遺伝子MEL1の発見に成功しました。国立遺伝学研究所 野々村賢一助教・倉田のり教授の研究チームと、農業生物資源研究所 廣近洋彦基盤研究領域長の研究チームとの共同研究の成果です。

  研究チームは、イネの突然変異集団の中から、種子稔性の低下を指標にして、生殖に関係する突然変異体を選抜し、その原因遺伝子MEL1を特定しました。MEL1は、短いRNAを介した遺伝子発現抑制機構(RNAサイレンシング機構)に関与するアルゴノート(ArgonauteAGO))ファミリーに属する遺伝子でした。MEL1遺伝子を破壊した突然変異体は、植物体や穂、花の外形は正常型と全く同じですが、葯や雌しべの内部にできる生殖細胞の細胞分裂や成熟過程が途中で異常になるために、種子が全くできなくなります。MEL1遺伝子は、雌雄の生殖始原細胞、およびそれらから派生し、将来花粉や卵になる細胞で特異的に発現することを突き止めました。

  イネやムギなどの穀類では、花粉形成期に低温あるいは高温などのストレスを受けると、生殖組織の発生が異常となり、収量が減少することが問題となっていますが、そのメカニズムは未だに不明です。今回の成果は、植物の生殖組織の成立メカニズムを解明する大きな手がかりとなると同時に、生殖に関わるストレス障害などを克服するための基盤となることが期待できます。


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