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バイオ燃料変換技術研究開発

農研機構
バイオマス研究センター
食品総合研究所

平成21年度 研究成果報告

担子菌によるwhole cropの直接エタノール発酵技術の開発

(独)農研機構 食品総合研究所 食品バイオテクノロジー研究領域 生物機能利用ユニット
(独)農研機構 食品総合研究所 食品工学研究領域 製造工学ユニット
東京農工大学 大学院 共生科学技術研究院 環境資源共生科学部門
富山県農林水産総合技術センター 森林研究所 森林資源課

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概要

 バイオマスを原料としたバイオエタノール生産プロセスでは、酸また酵素糖化後に酵母で発酵させる方法が主流である。しかし ながら、特にリグノセルロースバイオマスを原料とした酵素糖化法では、酵素の価格が高く、製造コストが高いことが問題となっている。そこで、我々は木材腐朽菌であり、 エタノールも生産できる担子菌類に着目し、研究を行った結果、エノキタケFv-1株が利用できる可能性があることを見出した。きのこ栽培においては固相培養が普通であるが、 固相培養はバイオマス濃度を濃くできるため、廃液処理コストを削減できるうえ、whole cropの水分含量は70%w/v程度であり、水分含量を維持することができれば、通常の 方法では必須である前処理や糖化時のバイオマスの希釈濃縮を省くことが可能となり、大幅なコスト削減が期待できる。  そこで、固相条件下でエノキタケFv-1株のエタノール発酵特性を解析し、更にアンモニア前処理したイナワラのエタノールへの変換を評価した。エノキタケFv-1株はごく微 量の糖化酵素を添加するだけで、高効率にイナワラ中のヘキソースをエタノールに変換し、酵素生産・糖化・発酵同時進行する連結バイオプロセス(CBP)の有用性が示された。

エノキタケFv-1株の固相エタノール発酵特性

固相条件でのグルコースの変換:エタノール変換効率77.3%
固相条件での糖選択性        a)発酵終了時の消費糖量 b)使用した糖量に対する最大エタノール変換率 c)検出不可
       

液体培養と同等の変換率であり、糖選択性も同様。

エノキタケFv-1株によるアンモニア処理したイナワラのエタノール発酵

エタノール発酵:全ヘキソース量に対するエタノール回収率77.8% 発酵条件下でのバイオマスの糖化

       

添加した量の糖化酵素では10%程度の糖化しかなされないが、全ヘキソースの78%に相当するエタノールが得られ、連結バイオプロセスの有効性が示された。

βグルコシダーゼ活性(PNP-β-glucopyranoside分解活性)セロビオハイドラーゼ活性(PNP-β-lactpyranoside分解活性)

エノキタケFv-1株は発酵時に充分量のβ-グルコシダーゼを生産するが、セルロース分解活性は不足していることが示唆された。

       

まとめ

エノキタケFv-1株は、固相条件化でアンモニア前処理したイナワラを高度にエタノールに変換することが可能であることが示された。 通常の方法では困難である過酷な条件下において、高効率な変換が得られ、酵素生産・糖化・発酵同時進行(CBP)の有用性が示された。