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バイオ燃料変換技術研究開発

平成22年度 研究成果報告

木質バイオマス変換総合技術の開発

(独)森林総合研究所

区切り線

・B2チーム(森林総合研究所 研究コーディネータ 大原誠資)
B2チームはスギ等の林地残材を原料として、その輸送・保管、アルカリ蒸解前処理、酵素のオンサイト生産、糖化、発酵工程の技術開発に取り組んでいます。林地残材はかさ高いため、トラックには少量しか積載できません。本プロジェクトでは、トラックの荷台に簡易に装着可能な圧縮装置を開発することで、積載量を20-40%向上できました。前処理工程では、アルカリ蒸解のアルカリ濃度を高めて蒸解温度を下げること、3段酸素漂白及び二酸化塩素漂白工程を導入することでリグニン量2%以下のパルプ製造に成功しました。これにより、酵素タンパク質5mgで1gの糖を生産することが可能になりました。また、固体培養によるオンサイト生産酵素を用いた同時糖化発酵により、酵素生産培地資材費6円/Lを達成しました。

概要

木質バイオマスの効率的輸送保管のための減容化技術の開発


・B030(陣川雅樹)
 末木枝条や端材などの林業バイオマスを、バイオマス専用車両ではなく、一般的な平ボディーのトラックに積載すると、枝葉や末木はかさ高いため少量しか積載できません。また荷台アオリも低いため荷台から崩れ落ちてしまいます。そこで、かさ高い林業バイオマスをトラックに積載するために、簡易にトラック荷台に装着できる簡易圧縮装置を開発しました。装置は、L字形のガイドフレーム2個をトラック荷台の左右のアオリに固定し、荷締め機によって2段階にバイオマスを圧縮することで圧縮率の向上を図っています。小型トラック(2トン)での試験では、荷締め張力は100〜150kgf、積載重量は40%向上しました。今後、装置の改造を行い、繰り返し試験による圧縮評価を検証します。


低コストアルカリ処理による木質系バイオマスの酵素糖化前処理法の開発




・B050(真柄謙吾)
 水酸化ナトリウムで蒸解してパルプ化したスギの酵素糖化において、酵素の回収再利用または酵素使用量を削減してコストダウンを達成するためには、パルプ中のリグニン量を3%以下に低減する必要があります。そこで、アルカリ蒸解と酸素漂白でリグニン量を5%まで落としていた従来の方法に対し、アルカリ蒸解でのアルカリ濃度を高めてエネルギー負荷の軽減と脱リグニン度の強化を行い、さらに最終工程に二酸化塩素漂白を加えることにより、パルプ中のリグニン量2%以下を達成しました。


アルカリ前処理木質バイオマスの糖化に適する新規な酵素系及び微生物を使った低コストエタノール変換技術の開発

・B060(下川知子)
 結晶性セルロース分解能力の高いトリコデルマ酵素と、多種類の細胞壁分解酵素を生産するアルペルギルスの酵素系とを混合させることで、相乗効果を利用した効率的な木質バイオマス分解系を確立しました。菌の潜在的能力を引き出し、安価な培地資材を使用可能である固体培養による酵素生産方法を最適化し、酵素生産量を増大させ、糖化酵素の低コスト製造を行いました。オンサイト生産酵素を用いた同時糖化発酵により、基質濃度7.5%の反応系で酵素生産費用の目標値を達成しました。また、基質濃度15%の反応系で49 g/L以上のエタノールを生産可能であることを示し、オンサイト生産酵素を用いた同時糖化発酵によるスギパルプからのバイオエタノール生産の可能性を示しました。

セルラーゼ生産菌培養液を用いたバイオエタノール生産技術の開発

・B080(野尻昌信)
 スギからのエタノール生産技術開発にとって生産コストの削減が重要であり、特に、セルラーゼの使用量を減らしつつ、酵素反応効率を向上させることが大きな課題となっています。スギの前処理技術を担当する課題と協力しながら、セルラーゼの使用量を削減しても効率良い酵素反応が可能な条件として前処理によるリグニン残量が3%以下であることを明らかにしました。これにより酵素タンパク質5mgで1gの糖を生産するという目標を達成しました。また、酵素反応では、使用した酵素の一部がバイオマスに吸着し、生産性を喪失してしまうことを顕微鏡的に確認しました。さらに、セルラーゼ生産培養の改良によりエタノール製造コスト削減が図られました。

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