品種の特徴

越のかおり」は、白米のデンプン成分のうち、炊飯米を硬くするアミロースの含有量が多いので、茹でても溶けにくく、麺離れが良いので、米の麺として新たな食感の商品ができます。

栽培特性は、「キヌヒカリ」とほぼ同等なので、倒れにくく、選別・精米などには同じ調整方法が使えます。
関東から九州まで広く栽培されている品種「キヌヒカリ」に、インド在来イネの持つ粘りの少ない性質だけ取り込んだ品種です。

品種登録出願公表平成20年8月5日(旧系統名:北陸207号)

成分・特徴の比較
品種名 アミロース
含有量(%)
タンパク質
含有量(%)
稈長
(cm)
精玄米重
(kg/a)
同左比率
(%)
越のかおり 33.1 6.2 75 62.9 96
コシヒカリ 17.5 6.1 90 65.4 100

開発のねらい

我が国の食料自給率は40%程度であり、米の需要を拡大するためには、麺やパンなどへの米粉の利用を積極的に進める必要があります。一般食用米を原料とする米麺の製品化が試みられていますが、一般の品種では、表面の粘りが強く、麺離れが悪いことが欠点とされています。そこで、麺離れが良く製麺適性を持った、粘りが少ない高アミロース水稲品種を育成しました。
この品種を使い、地域特産物として米麺の製品化が可能になるなど、新規需要米としても利用できます。

品種の特徴

「キヌヒカリ」にインド原産の在来種「Surjamukhi」が持つ高アミロース性を導入した品種ですが、粒状は短粒の日本型品種であるため、選別、精米などに既存の設備や機械での調整方法そのまま適用できます。
白米のアミロース含有量は、「コシヒカリ」より15ポイント程度高く、麺に加工した場合に麺離れが良い商品の開発が可能です。

栽培・収穫特性

「コシヒカリ」より、出穂期は2日ほど早く、成熟期はほぼ同じで、育成地では“中生の早”に属します。
稈長は、「キヌヒカリ」並の“やや短”、穂長は“やや短”、穂数は「コシヒカリ」よりやや少ない“中”、草型は“偏穂重型”です。
耐倒伏性は「コシヒカリ」より強く、“やや強”です。
収量性は、標準的な標肥区では「コシヒカリ」よりやや少収ですが、施肥が多い場合では「コシヒカリ」並です。千粒重は、「コシヒカリ」よりやや重い“中”です。製麺適性には、標肥・多肥栽培間で差はありません。

品種の名前の由来

新たな需要が見込まれる米麺の原料として、米どころを香り高く彩るイメージを表しました。

アミロースとは

米の主成分であるデンプンは、アミロースとアミロペクチンに分けられます。
アミロースは、糖質であるグルコースの分子が、アルファ結合して重合し、真っ直ぐな鎖状になった高分子で、炊飯時に極めて糊化(水が入ってやわらかくなること)しづらく、冷えると老化(硬くなる)しやすいと特性を持ちます。一方、アミロペクチンは、グルコースの分子が木の枝分れのように結合し、枝分れの鎖にさらに別の鎖が結合するといった複雑な構造を持ち、炊飯時に糊化しやすく、老化が遅い特性を持ちます。

アミロースの含量が高いと炊飯米は硬くなり、粘りが少なくなります。もち品種は、アミロースを含まず、アミロース含量は0%です。日本稲のうるち品種の多くは、アミロース含量は約20%です。一方、東南アジアを中心に栽培されているインド型品種の多くは、アミロース含量が30%程度の高アミロース米、あるいは、アミロペクチンの鎖長が長い米です。煮立てても米粒が溶けず、掴んでも手にくっつくことがありません。ヒトは、糊化したデンプンしか消化できず、糊化しづらいアミロースあるいは長い鎖長のアミロペクチンは、レジスタント・スターチ(難消化性デンプン)と呼ばれています。

最近の研究で、難消化性デンプンは、食物繊維と同様の機能を持つことが明らかになっています。このデンプンの特性の違いは、新形質米品種の育成に利用されています。

関連リンク

>> 作物研の育成品種データベース
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