果樹研究所

一押し旬の話題

2011年8月 1日

モモ「なつおとめ」、「つきあかり」、「ひなのたき」、「もちづき」

モモがおいしい季節となりました。果樹研究所が育成してきたモモには、「 あかつき 」を筆頭に、幾つか皆さんの興味と食味をそそるような品種があります。 紹介しましょう。
「なつおとめ」「つきあかり」「ひなのたき」「もちづき」です。
モモはあまり品種名を付けて売られることがなかったのですが、最近では品種名で売られるようになってきました。気をつけていただくと、これらの品種を食べていただくことができると思います。

なつおとめ

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モモ「なつおとめ」は、1984 年に「 あかつき 」に「よしひめ」を交雑し、2002年に品種登録されました。

形はほぼ球形で、果実の大きさは230~300gと「 あかつき」より大果で、果皮の色は白地にぼかし状に赤く染まります。果肉の色は白で、肉質はやや密で繊維はやや多い傾向があります。種の周りに紅色が着き、果肉内にも紅色が多く出る ことがあります。

果汁の糖度は13~15%で、「 あかつき 」よりもやや高く、酸味は少ないので、より甘く感じられます。渋味の発生はありません。

真夏の8月上中旬が収穫期に当たり、果皮の着色も良く、肌荒れも少なく、乙女のような果実になることから、この名前が付けられました。

つきあかり

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モモ「つきあかり」は、1991年に、「まさひめ」に「 あかつき 」を交雑し、2010年に品種登録されました。 まだ出来たてです。

果実の大きさは200g余りで、モモでは中玉です。果皮、果肉ともに黄色で、糖度が高く、酸味が少なく、食味は良好です。糖度は平均で14%程度あり、「 あかつき 」より甘い品種です。

わが国の生食用モモ品種の多くは白肉で、黄肉は缶詰用の印象が強く、生食に用いられることはあまりありません。しかし近年、消費者嗜好の多様化により、生食用の黄肉品種にも関心が高まってきており、「つきあかり」も注目されています。

果実の収穫期はつくばで7月下旬から8月上旬で、黄色モモの代表的な「黄金桃」より2週間あまり早く、「 あかつき 」より1週間程、遅い品種です。果肉の色や形から、『月の明かり』を思わすことから、この名前が付けられました。

ひなのたき

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モモ「ひなのたき」は枝垂れモモです。6月に少し紹介しましたが、2010年に登録されました。花は八重咲きで大きく、花弁は桃色で40枚前後と多いので、見栄えもします。つくば市での開花期は4月上旬で、開花期間が3週間以上と長いので、長く楽しめます。

果実の成熟期は7月下旬です。果実は150g前後と小さく、果皮の黄色地に、ぼかし状に着色します。糖度は9%ほどで甘味は少ないのですが、酸味が少なく、苦味もないため、生食が可能です。
自分の花粉で実が止まりますので、1本買ってくれば、ご家庭でも作ることができます。花も実も楽しんでいただけると思います。

もちづき

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モモ「もちづき」は1985年に選抜された白肉の缶詰用品種です。2000年に品種登録されました。

果肉はやや硬く、そのまま硬さを長く保っており、日持ち性は極めて良好で、缶詰にした場合、なめらかで、緻密な舌触りとなり、色の濁りのないきれいな製品ができます。
果皮や果肉内に赤い着色が全く生じない特異なタイプのモモです。

普通は缶詰用の白肉のモモにするために、袋掛けを必要とするのですが、「もちづき」は無袋栽培下でも無着色となるので、その点でも省力的な栽培ができます。

「天津水蜜桃と蟠桃」

モモの話題に併せて面白い新種を紹介します。

天津水蜜桃〔てんしんすいみつとう)

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「天津水蜜桃〔てんしんすいみつとう)」は、童話の桃太郎に出てくるモモです。頭が尖り、果肉が赤く、2つに割ったら、そこから桃太郎が飛び出してきそうなモモです。

珍しい形ですが、酸味が多く食味はあまり良くありません。昔は砂糖煮にして食べられたようです。
明治の初めに中国から導入された最初のモモです。当時としては、甘い果物が少なく、かぶりつくと、まるで密のような果汁があふれ出たところから名付けられたのでしょう。

同じ時に、「上海水蜜桃」が入りましたが、これは味が良く、「白桃」、「白鳳」のルーツとなったことがDNA判別から明らかにされました。頭の尖ったモモは味が良くなかったため、近年の品種改良で、世の中から消えてしまいました。

蟠桃(ばんとう)

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「蟠桃(ばんとう)」は、孫悟空に出てくるモモです。味は、そこそこ美味しいのですが、とてもモモとは思われない形をしています。
孫悟空が庭番をしていた仙人の庭にあり、1つ食べると数千年寿命が延びると言われ、孫悟空はこれを盗んで食べたことで、五行山に閉じこめられてしまったいう謂われのあるモモです。

この「蟠桃」も、明治の初めに、「天津水蜜桃」、「上海水蜜桃」などと一緒に、中国から、導入されました。

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