ルチンを多く含むダッタンソバ「満天きらり」加工品の体脂肪率上昇抑制効果

要約

ダッタンソバ品種「満天きらり」は子実に多量のルチンを含み、本品をそば粉として使用した乾麺でもルチンが保持され、苦味はほとんど生じない。実施したヒト介入試験においては、「満天きらり」配合麺の摂取4週目に体脂肪率の上昇抑制が認められる。

  • キーワード: 満天きらり、ダッタンソバ、ルチン、体脂肪率上昇抑制効果
  • 担当: 北海道農業研究センター・畑作物開発利用研究領域・農産物評価利用グループ
  • 代表連絡先: 電話 029-838-8011
  • 分類: 普及成果情報

背景・ねらい

ダッタンソバ(Fagopyrum tataricum Gaertn.)品種「満天きらり」は、ルチン分解酵素活性が極めて低いためダッタンソバ特有の苦味が軽減された特徴を有する。また、普通ソバの100倍以上のルチンを含有するため、脂質代謝改善などの生理活性効果も期待される。現在、「満天きらり」を配合した麺などの加工品の開発が進められているが、付加価値を高めた利用を促進するためには成分含量や機能性効果を明らかにする必要がある。そこで、「満天きらり」を使用した麺およびクッキーを製造し、それらに含まれるルチン含量を評価する。また、ヒト介入試験による生活習慣病予防効果を検証する。

成果の内容・特徴

  • 「満天きらり」を使用した乾麺およびクッキーにはルチンが残存し、ヒト介入試験の被験食である5割配合麺およびクッキーにおいて、ケルセチンに分解されずに残存したルチンは、使用したソバ粉に対しそれぞれ94.6 %および50.0 %である(表1)。
  • ヒト介入試験の被験食である「満天きらり」5割配合乾麺1食分(現物80g)中のルチン含量は620 mgであるが、茹で後の減少率(48.7 %)を考慮すると318 mgとなる。5割配合クッキー1食分(現物50 g)のルチン含量は321 mgである(表1)。
  • 実施したヒト介入試験では、「満天きらり」5割配合麺を12週間継続摂取した群において、体脂肪率で4週間目にプラセボ群より有意な低減が見られる(図1)。また、体重およびBMIでも8週間目にプラセボ群より有意な低減が見られる(図1)。

普及のための参考情報

  • 普及対象:食品加工・販売業者
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:全国のソバ屋、フランチャイズ、乾燥麺、菓子等製造・販売業者。ダッタンソバ麺133万食(粉40 t、一食30 g配合で計算)。
  • その他:
    1) ヒト介入試験の結果は機能性食品表示制度への届出の参考データとして利用する。
    2) ヒト介入試験は動脈硬化指数(LDL/HDL)が1.5以上4.5以下の30歳以上70歳未満の男女を対象としたプラセボ対照二重盲検並行群間比較試験である(図2)。最終解析人数は「満天きらり」5割配合麺1日80 g(麺を摂取できない場合は週に2回までクッキー50 gも可)を12週間継続摂取した144人である。試験実施期間は2015年1月8日から5月3日であり、北海道情報大学生命倫理委員会承認を得て遂行された(UMIN000015682)。
    3) 脂質関連項目や血糖関連項目についての効果は認められない。
    4) 粉のルチン含量は製粉機の特性や製粉時の玄ソバの水分含量に影響されることに留意する。
    5) 「満天きらり」については、以下の情報も参考となる。
    研究成果情報 良食味のだったんそば新品種候補「芽系T27号」(2011)
    普及成果情報 ダッタンソバ「満天きらり」の加工時のルチン含量の変動要因(2016)

具体的データ

表1 ヒト介入試験における試験食の栄養成分含量とルチン含量,図1 ヒト介入試験における体脂肪率、体重およびBMIの変化量,図2 「満天きらり」摂取ヒト介入試験プロトコール

その他

  • 予算区分: その他外部資金(24補正「機能性食品プロ」)
  • 研究期間: 2013~2015年度
  • 研究担当者:
    石黒浩二、森下敏和、鈴木達郎、野田高弘、西村三恵(北海道情報大学)、西平順(北海道情報大学)、芦澤順三(小林食品)
  • 発表論文等:
    1) Ishiguro K. et al. (2016) Food Sci. Technol. Res. 22(4):557-562
    2) Nishimura M. et al. (2016) J. Funct. Foods 26:460-469