焼酎醸造特性が優れ大粒で多収の二条大麦新品種「キリニジョウ」

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要約

二条大麦新品種「キリニジョウ」は、焼酎醸造適性が良く焼酎の官能品質に特徴があり優れる。千粒重と容積重が大きく多収である。精麦白度が高く精麦品質が良い。オオムギ縞萎縮病ウイルスI型系統とうどんこ病に強く、穂発芽性がやや難である。

  • キーワード:二条オオムギ、新品種、焼酎醸造適性、大粒、多収
  • 担当:九州沖縄農研・特命チーム員(大麦・はだか麦研究チーム)
  • 連絡先:電話 0942-52-3101、電子メール kawada@affrc.go.jp
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、作物
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

食用及び焼酎用大麦の需要拡大に伴い、大麦・はだか麦については供給不足によるミスマッチを招いている。また、九州の焼酎醸造会社では特徴のある商品開発や焼酎原料の確保のため、契約栽培等により地域内の焼酎原料生産の振興と拡大を求めており、特に供給不足となっている焼酎醸造用二条大麦については、焼酎醸造会社が多い南九州での生産が要望されている。
そこで、暖地での栽培適性や収量性及び精麦品質が優れ、焼酎用として評価の高い「ニシノホシ」と比較して、大麦麹加工及び焼酎醸造適性が同等以上の二条大麦品種を育成する。

成果の内容・特徴

二条大麦新品種「キリニジョウ」は、多収、短稈、良質、縞萎縮病抵抗性を育種目標として、1991年度に「西海皮48号/羽系 89-61」の交配を行い、派生系統育種法により選抜固定を図り育成した焼酎醸造用二条大麦品種である。「ニシノホシ」と比較して、次のような特徴がある (表1、表2)。

  • 播性はI、茎立性はやや早の春播性で、出穂期で1日早く成熟期は同程度の早生種である。
  • 稈長は同程度のやや短稈で、耐倒伏性は同程度で強い。
  • 穂長はやや短く、穂数は同程度かやや多く、子実収量は同程度で多収である。
  • 千粒重は大きく、容積重も大きい。
  • オオムギ縞萎縮病ウイルスのI型系統には強いがIII型系統には罹病する。うどんこ病には強く、赤かび病は同程度かやや弱い。穂発芽性はやや難で穂発芽しにくい。
  • 搗精時間や精麦白度は同程度で精麦品質は良いが、欠損粒歩合はやや大きい。
  • 大麦麹の消化性と糖化性は同程度で、総合力価も同程度に良い。アルコール収得歩合は同程度かやや高く、焼酎醸造適性は良い。焼酎の官能品質に甘みなどの特徴があり優れる。

成果の活用面・留意点

  • 暖地の平坦地及び中間地に適し、いも焼酎用麦麹の醸造原料として宮崎県で普及予定である。
  • 春播性の早生種であるので極端な早播きは避け、適期播種を行う。
  • 赤かび病抵抗性が十分でないので、適期防除を徹底する。

具体的データ

表1 二条大麦新品種「キリニジョウ」の特性

表2「キリニジョウ」のいも焼酎用麦麹の醸造特性

その他

  • 研究課題名:高精麦特性を備えた焼酎醸造用及び食糧用の二条大麦品種の育成
  • 課題ID:311-d
  • 予算区分:交付金、麦緊急開発、21世紀プロ1系
  • 研究期間:1991~2006年度
  • 研究担当者:河田尚之、小田俊介、八田浩一、土井芳憲、田谷省三、佐々木昭博、塔野岡卓司、堤忠宏、
                       関昌子、波多野哲也、平将人、谷口義則
  • 発表論文等:命名登録(平成18年12月25日)、品種登録出願(平成18年12月8日)