Rhizoctonia属菌の大麦粒による簡易長期保存法

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要約

Rhizoctonia属菌を大麦粒培地で25度C、10日間培養したものを、 33度Cで24時間通風乾燥し、これを試験管に入れて綿栓をし、 家庭用冷凍庫等の低温下(-20度C)に保管することにより多数の菌株で変異もなく、 10年以上長期保存できる。

  • 担当:東北農業試験場・地域基盤研究部・病害生態研究室
  • 連絡先:019-643-3465
  • 部会名:生産環境
  • 専門:作物病害
  • 分類:研究

背景・ねらい

現在、多犯性のRhizoctonia solaniには、11種類の菌糸融合群がある。 本菌は保存中に病原性や生理的性質なとが変異し、 研究推進上の障害となることが少なくない。 簡便かつ多くの研究機関で利用できる本菌の長期保存技術の開発が 早急に望まれる。R.solani各種菌系及び2核のRhizoctonia菌を大麦粒培地で 培養し乾燥したものを10年以上長期保存してきた。今回、 それら菌株の生存率、培養形態、病原性を検討した結果、 本手法は長期保存法として実用性があると認められたので、培養・ 保存条件及ぴ本手法利用上の特徴を以下にとりまとめた。

成果の内容・特徴

  • 培養と保存法:大麦粒培地(大麦:水=6:5、少量時は同重量比、 120度Cで1.2気圧30分殺菌)で菌を25度Cで10日間培養する。培養容器は綿栓とし、菌移植3日後より毎日1回振って大麦を攪拌する。培養後の大麦は33度C一昼夜、通風乾燥する(水分含量を8~10%)。これを試験管に入れ綿栓したのち、ビニル袋に纏めて入れ-20度Cの家庭用冷凍庫あるいは冷蔵庫冷凍室に保管する。保存菌株が必要なときは、直接室温下に取り出し、素寒天(pH5前後)上に保存粒(5粒前後)を置き、 2、3日後に菌の分離を行う。
  • 特徴として、(1)多数の菌系が10年以上保存できる (表1)、(2)保存中に培養性質や病原性などの変異がほとんどない (表2)、 (3)停電、菌株の出し入れなど数日以内であれぱ、抵温維持対策を特に必要としない、(4)大量保存により、保存粒を接種試験に直接利用可能である (表2)、 (5)菌株の移動、輪送が容易である、などの利点がある。

成果の活用面・留意点

  • 菌株の使用に当たり保存粒からの菌の分離操作が必要であり、通常用いられている方法で行う。
  • 非病原性のAG-6およびAG-B1では、菌株によっては生存率が劣る例がある。

具体的データ

表1.家庭用冷凍庫等の低温下(-20°C)で10年間保存したRhizoctonia属菌菌株の生存割合

 

表2.Rhizoctonia属菌菌株の長期保存菌株の病原性

 

その他

  • 研究課題名:ダイズ葉腐病菌菌系の特性解明
  • 予算区分:経常
  • 研究期間:平成5年度
  • 発表論文等:
    (1)Rhizoctonia属菌の培養大麦粒による簡易長期保存法について、北日本病虫研報44:20-23(1993)