稲作の作付規模別エネルギー収支

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要約

水稲の作付規模別生産費データ(労働費を除く)に基づくエネルギー収支の実態 によれば、産出/投入比は全国販売農家では5~10ha層付近、 協業経営体では15ha以上の層で最大値を示す。

  • 担当:東北農業試験場・水田利用部・作業システム研究室
  • 連絡先:019-643-3536
  • 部会名:作業技術
  • 専門:作業
  • 対象:稲類
  • 分類:行政

背景・ねらい

農業構造の変化、農用地の流動化の進展、環境間題等の社会的背景、また農業機械の性能向上、農業土木技術の進歩、栽培技術の開発等の技術的背景から大区画圃場を基盤とした高位安定な大規模稲作営農の確立が要請されている。そこで、水稲の作付規模別の生産費データを用いてエネルギー収支を試算し、現時点での規模拡大とエネルギー投入の実態を把握する。

成果の内容・特徴

  • 全国販売農家の費用合計は0.3ha未満~1.5ha未満では急激に減少し、1.5ha~5.0ha未満までは減少程度が鈍化、5ha以上では横ばいとなる。これは労働、賃借料・料金、農機具、光熱動力、建物・土地改良設備、種苗の各費目の削減による。協業経営体の費用合計は15ha未滴では労働、賃借料・料金、種苗の各費目の削減によって減少するが、それ以上ではさらなる減少はみられない。
  • 全国販売農家の投入エネルギー(図1)は費用合計の変化と類似する。これは農機具、肥料、農業薬剤、賃借料・料金の削滅による。協業経営体の投入エネルギー(図2)は費用合計の変化とは異なる。これは15ha未満では賃借料・料金が滅少するものの、一方では光熱動力の増加が大きいために、滅少する傾向はみられない。しかし、15ha以上では全体として投入エネルギ一は抵くなる。協業経営体の平均値と全国販売農家の平均値と大規模層の5ha以上の平均値とを比較すると(表1)、協業化することにより農機員、光熱動力、建物・土地改良設備への工ネルギー投入が削滅される。
  • 全国販売農家の産出ユネルギーは、0.3ha未満~1.5ha未満9.0GJ(収量516kg)、1.5ha~5.0ha未満9.5GJ(545kg)、5ha以上9.3GJ(533kg)である。協業経営体の産出エネルギーは、15ha未満8.8GJ(504kg)、15ha以上8.9GJ(514kg)のレベルにある。
  • 産出/投入比は全国販売農家(図3)では、作付規模の拡大に伴って上昇し、5~10ha層において1を越えるが、10ha以上では収量の減少によるために1を下回る。一方、協業経営体(図4)では15ha以上で1を越え、この層の平均は1.11となる。

成果の活用面・留意点

  • 大規模稲作経営の策定と技術的間題の摘出に参考となる。
  • 費日別エネルギー単価は田中洋介(1990)「米生産における収量変動と必要エネルギー」「農業・農村におけるエネルギー利用」(農林水産技術会議事務局)を用い、農村物価賃金統計の物価指数から平成元年度の単価を設定。全国販売農家については平成元年と2年、協業経営体では平成2年と3年の平均値を用いて推計した。なお労働費は除外している。産出工ネルギーは玄米の発熟量から算出した。

具体的データ

図1.全国販売農家の10a当たり投入エネルギー

 

図2.協業経営体の10a当たり投入エネルギー

 

表1.協業化に伴う費目別投入エネルギーの削減効果

 

図3.全国販売農家のエネルギー収支

 

図4.協業経営体のエネルギー収支

 

その他

  • 研究課題名:大規模水稲直播栽培における作業計画支援システムの開発
  • 予算区分:地域総合
  • 研究期間:平成5~9年
  • 発表論文等:第197回作物学会講演会で発表