緑茶抽出液に含まれる免疫賦活活性成分とその効果的抽出法

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要約

緑茶抽出液に含まれる免疫系の活性化に有効な茶成分は、幼葉の水溶性高分子画分に多く含まれるRNAとエピガロカテキン(EGC)であり、冷水抽出することによりこれら成分をより効果的に利用できる。

  • キーワード:茶、免疫賦活作用、水溶性高分子画分、ssRNA、EGC比率
  • 担当:野菜茶研・野菜・茶機能性研究チーム
  • 代表連絡先:電話0547-45-4101
  • 区分:野菜茶業・茶業、食品
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

緑茶の免疫調節機能は以前から報告されており、水溶性高分子画分の免疫賦活作用についてはいくつかの報告があるが、その詳細は明らかではない。また、カテキン類も免疫調節作用を有する報告があるものの、その多くは抗炎症作用や抗アレルギー作用であり、免疫賦活作用についての報告は少ない。そこで、緑茶抽出液中の水溶性高分子画分(crude tea polysaccharide: TPS)に含まれる活性成分を探索し、その作用機序と緑茶カテキン類の免疫賦活作用について明らかにするとともに、これら成分の効果的抽出法について明らかにする。

成果の内容・特徴

  • マクロファージ様細胞の貪食活性を指標に緑茶の水抽出液から分離したTPSの免疫賦活作用を評価すると、幼葉(芽から3葉までの上位葉)由来のTPSは、成熟葉(4葉以下の下位葉)由来のTPSに比べて高い免疫賦活活性を示す。活性の高いTPSは活性の低いTPSに比べて免疫賦活作用を有することが知られている核酸(特にRNA)を多く含む(図1)。
  • TPSの活性がToll様受容体(Toll-like receptor: TLR)7の阻害作用を有するimmunoregulatory DNA sequences(IRS)661および954により阻害されることから、活性を持つTPSは、ssRNAのレセプターとして知られているTLR7を介して免疫賦活作用を誘導することが示唆される(図2)。
  • EGCおよびエピガロカテキンガレート(EGCG)にマクロファージ様細胞の貪食能を活性化する作用があり、その活性の強さはEGC > EGCGである。EGCGとEGCを1:1で混合すると活性が低下する(図3A)が、EGC比率の上昇に伴い活性が上昇し、EGCG/EGC比が1:3以上で有意となる(図3B)。
  • 茶の抽出温度が高温(80°C)の場合、抽出液中のEGCG/EGC比は免疫賦活に無効な1:1であるが、抽出温度を下げるに従いEGCの含有比が高くなり、4°Cでは免疫賦活に効果的な活性成分比率である1:3以上となる(図4)。また、TPSも熱水抽出よりも冷水抽出の方が、活性が高い(データ省略)ことから、冷水抽出によりこれら成分を効果的に抽出できる。

成果の活用面・留意点

  • 幼葉由来TPS及びカテキン類をマウスに経口投与した実験でも腸管免疫系(パイエル板細胞IgA産生能)の活性化において同様の結果を得ている。

具体的データ

図1 成熟または幼葉由来のTPSの免疫賦活活性の違いとRNA含有量の違い

図2 TLR阻害作用を有するIRSによる幼葉由来TPSの活性変化

図3 茶に含まれる主要カテキンであるEGCGとEGCの免疫賦活活性

図4 茶を抽出する時の水温の違いによるカテキン成分の含有比率の違い

その他

  • 研究課題名:野菜・茶の免疫調節作用、生活習慣病予防作用を持つ機能性成分の評価法と利用技術の開発
  • 中課題整理番号:312b
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:2006~2009年度
  • 研究担当者:物部真奈美、山本(前田)万里
  • 発表論文等:1) Monobe et al.(2007)J. Agric. Food Chem. 55:2543-2547 2) Monobe et al.(2008)J. Agric. Food Chem. 56:1423-1427