カンキツ用の非破壊型選果機の有効利用法

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要約

カンキツの選果場で稼働中の非破壊型選果機は、糖度測定精度は高いが酸度については若干の問題がある。産地活性化のため、非破壊型選果機の特性を十分把握し、ばらつきの少ない果実販売と適正な栽培指導が必要である。

  • 担当:四国農業試験場・総合研究部・総合研究第1チーム
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 部会名:傾斜地農業・果樹
  • 専門:加工利用
  • 対象:果樹類
  • 分類:普及

背景・ねらい

外国産カンキツ果実の輸入増加に対抗するため、国内産カンキツ果実の高品質化は必須の条件となっている。そのため、非破壊型品質評価システムが多くのカンキツ産地の選果場に導入され、個々の果実の品質が容易に測定できるようになってきた。しかし、多くの選果場では、非破壊型選果機が有効に利用されていないことが多い。そこで、高品質果実販売戦略を立てるために、非破壊型選果機の実態を明らかにし、非破壊型選果機の有効利用を図る。

成果の内容・特徴

  • 糖度の非破壊測定においては、選果機の機種間差があるものの、従来からの破壊検査と0.9以上の高い相関が見られる(図1)。一方、酸度の測定精度については、0.4~0.5と相関が低い(図2)。同じ果実を繰り返し選果した場合の読みとり誤差は、糖度で0.2~0.6度、酸度で0.05~0.09%である。
  • 園地、樹体ごとに選果データをとることで、同一品種(宮川早生)でも、農家・園地・樹体によって、大きな品質間差、ばらつきがあることが明らかになり(図3、4)、非破壊型選果機を導入することによって、品質の悪い果実を確実に除くことができ、高価格販売が可能となるとともに、高品質果実生産のための栽培指導も容易になる。
  • 非破壊型選果機を有効利用し、優良な産地となるためには、1非破壊型選果機で厳選した高品質果実を特選商品として販売し、2一箱内の果実の味のばらつきを少なくするとともに、3選果場の効率化・作業の簡素化を行い、4品質の悪い園地、生産者へは、品種更新、マルチ栽培、排水改善などの的確な指導を行う必要がある(図5、6)。

成果の活用面・留意点

  • 非破壊型選果機導入の際には、選果機の部分のみならず、集出荷全体で利用形態を考える必要がある。
  • 産地活性化のためには、選果データを農家に還元できるソフト面の充実が必要である。
  • 酸度については、利用の仕方を考慮するとともに、早急な精度向上のための対策が必要である。

具体的データ

図1.非破壊型選果機の選果精度の一事例(糖度)

 

図2.非破壊型選果機の選果精度の一事例(酸度)

 

図3.同一農家・同一品種でも圃地で品質差あり

 

図4.平均糖度は同じでも農家間で内容差がある

 

図5.非破壊型選果機を有効利用している例

 

図6.非破壊型選果機を生かし切れていない例

 

その他

  • 研究課題名:高品質化のための土壌管理技術を導入した中山間カンキツ園の軽作業システムの確立
                    -非破壊型品質評価システムの有効利用技術の解明-
  • 予算区分:総合研究(地域総合)
  • 研究期間:平成12年度(平成10年~12年)
  • 研究担当者:長谷川美典・吉川(山西)弘恭・中尾誠司・(中島教博・伊庭慶昭(宇都宮大))
  • 発表論文等:果実の非破壊内部品質評価装置(光センサー)に関する調査研究(第2報)
    光センサー導入後の問題点と機械精度, 園芸学会雑誌, 68(別1), 49, 1999.