花き研究所

花き病害図鑑

菌核病(キンカクビョウ)

Sclerotinia rot,White bulb rot(糸状菌)

植物名: チューリップ ユリ科 Tulipa spp.
病原菌: Sclerotinia sclerotiorum
病徴写真

花茎の下部が水浸状に褐変する。病斑は大型の紡錘形になる。多湿時には病斑部周辺は白色菌糸で覆われることがある。やがて病斑部には初め白色、のち黒色の菌核が形成される。写真では左の花茎で菌核が形成されている。

萌芽時に見られる菌核病。葉腐病の病徴に類似するが葉腐病の病斑より大型のことが多い。ここでもやがて菌核が形成される。

促成栽培時の施設内で形成された本菌の子のう盤(キノコ)

花茎の水浸状軟化と病斑部に形成されつつある菌核

萌芽直後に発生した本病

地際部花茎に形成された菌核
病徴:

萌芽時と生育後期の茎葉繁茂時の二時期に発生するが、萌芽期のそれはこれまで葉腐病や茎枯病と混同されてきたきらいがある。本病の病斑は茎枯病のそれより水浸状で大型の病斑であることが多い。多湿時には白色の菌糸が病斑部に形成され、やがてネズミの糞状の黒色菌核を組織内外に形成する。生育後期の病徴は茎葉が繁茂し通風不良で比較的冷涼な時期に発生し、茎に水浸状の紡錘形の病斑ができ、白色菌糸が見える。ここにも黒色菌核が形成される。発病株周辺の地面にはまれに子のう盤が形成される。

発生時期:

萌芽期、茎葉繁茂期

発生場所:

露地、施設とも

備考:

本菌は多犯性で球根類の他、野菜類全般に寄生する代表的な土壌伝染性病原菌の一つである。伝染源は土壌中や被害残渣上の菌核と考えられる。菌核上には子のう盤が形成され、子のう胞子を空中に飛散させ二次伝染する。

文献:

永田利美:土壌病害の手引 I:22, 1962

外部サイト:

日本植物病名データベース

記述者:

築尾嘉章

記載日: 2011年7月11日

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