花き研究所

花き病害図鑑

根腐病(ネグサレビョウ)

(糸状菌)

植物名: チューリップ ユリ科 Tulipa spp.
病原菌: Pythium irregulare,Pythium spinosum,Pythium ultimum var. ultimum
病徴写真

根が水浸状に褐変している。右の球根では健全な白い根が若干残っている。

促成栽培時の萌芽不良症状、右側の萌芽が遅れている。

比較的軽症の根腐病、根の先端が褐変している。

水浸状に褐変した根
病徴:

初めは根の先端部が侵される場合が多く、その後根の各部が淡黄色に腐敗し、地上部が健全株に比べて早期に黄化する。病原菌によっては球根も侵し、軟腐する ことがある。生育抑制による開花遅延や開花を待たずして枯死する場合がある。露地よりも促成栽培で症状は激しく、1シ-ズンに採花を3回行う場合などは1作目は被害がなくとも2、3作目に多発することが多い。

発生時期:

病原菌は糸状菌の一種で鞭毛菌類に属し、患部には球状の卵胞子を形成する。3種の内、P. ultimum var. ultimumの病原性が最も強く被害も大きい。促成栽培においては球根まで侵す場合がある。次いで重要なのがP.irregulareで、P. spinosumはあまり重要でないと考えられている。いずれも土壌で伝染し、球根伝染は前年の根をきちんと除去してあれば、あまり考えなくて良い。水田裏作では殆ど問題になっていないが、砂丘畑や促成栽培で近年問題となっている。病原菌の性質から土壌が多湿の条件で発生が多いと推察される。

文献:

一谷多喜郎ら:日植病報 54(3):355, 1988 一谷多喜郎ら:日植病報 55(4):498, 1989 ,  一谷多喜郎ら:日植病報 55(1):100, 1989 一谷多喜郎ら:日植病報 57(2):174, 1991

外部サイト:

日本植物病名データベース

記述者:

築尾嘉章(花き研)

記載日: 2012年1月19日

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