今、お店で売られている「ふじ」果実は、昨年の秋に収穫した果実です。「ふじ」の特徴は味の良いこともありますが、貯蔵性や日持ちの良いことも大きな利点の1つです。これらの性質が世界中で評価され、「ふじ」は今や、世界で最も多く作られているリンゴとなったのです。
「ふじ」がいくら日持ちがよいといっても、普通に貯蔵していたら、数週間でボケてしまいます。CA貯蔵と言って、普通の空気(酸素20%、二酸化炭素0.04%)より酸素を低く(5%)、二酸化炭素を高く(5%)した中で低温(0度)貯蔵 しています。この様な環境では人は生きていられません。「ふじ」は眠ったように養分のロスしないように、長い間貯蔵されます。
「ふじ」の果実には、大きな特徴があります。果肉に蜜が入ることです。 「ふじ」が生まれるまで、リンゴに蜜が入ると果肉が柔らかくなりすぎたり、黒ずんだりして食べるのには適していませんでした。 世界で初の、蜜が入っても果肉の食感が良く、変色しにくいリンゴが「ふじ」になります。
ふじの歴史
白く綺麗なふじの花
「ふじ」は1939年、「国光」に「デリシャス」の花粉を交配して、得た2,004粒の種をまき、その中から選抜されたリンゴです。東北7号として各県の試験場で性質が調査され、「ふじ」と命名され、リンゴ農林1号として登録されたのは、1962年のことです。「ふじ」は果樹研究所の前身である農林省園芸試験場東北支場のあった、青森県藤崎町で育成されましたが、その後研究所が岩手県盛岡市に移転するに伴って、原木も、1961(昭和36)年に、青森県藤崎町から岩手県盛岡市に移植されました。
リンゴは、原則として、挿し木や取り木で増やすことはできません。枝から自根を発生させることが極めて困難ですから、原木から採取した枝(穂木)をいろいろな系統の台木用品種に接ぎ木して増殖します。世界中のすべての「ふじ」は、この原木の枝を接木して増殖されたものです。
「ふじ」の名前は富士山のように日本一の品種になれと、また、育成地の藤崎町の藤から名付けられました。
「ふじ」の原木
原木は、今年(2011年)で71歳で木が弱っているため、花が咲く前に摘み取ってしまいます。
「ふじ」がまだ元気だったときに花を咲かせた写真です。
同じように「ふじ」の実を付けた貴重な写真になります。
今では、見ることのできない光景です。
氷点下10度以下になる寒いリンゴ研究拠点(盛岡市鍋屋敷)で今も生きています。