果樹研究所

一押し旬の話題

2011年8月15日

ナシ「なつしずく」、「幸水」、「豊水」、ブドウ「安芸クイーン」

夏果物、真っ盛りとなりました。暑い夏には瑞々しいナシがよく似合いますね。
今回は、ナシの「なつしずく」と、皆さんもご存じのナシ「幸水」、「豊水」を紹介します。

それと、ブドウもそろそろ出回ってきました。
果樹研究所で育成したブドウの「安芸(あき)クイーン」も紹介します。

ナシ「なつしずく」

なつしずく

「なつしずく」は名前も瑞々しく、美味しいナシです。1990年に「平塚25号」に「筑水」を交雑して育成した早生の青ナシで、2008年に品種登録されました。
青ナシというのは「二十世紀」に代表されるような、果色が黄~黄緑色のナシです。ちなみに、「幸水」や「豊水」は赤ナシと呼ばれています。
「なつしずく」の形はほぼまん丸く、果色は黄緑色です。果実の大きさは「幸水」とほぼ同じくらいの300g程度です。肉質は柔らかく、果汁も多く、糖度は12%前後で「幸水」と同程度に高い品種です。酸味はほとんど感じられません。
みつ症の発生はほとんど無く、果実の日持ち性は25°Cで1週間前後で「幸水」と同程度です。果面のさびが少なく、無袋栽培でも外観がきれいに仕上がるため省力化のできる品種です。

ナシ「幸水」

幸水

「幸水」は1941年に「菊水(きくすい)」に「早生幸蔵(わせこうぞう)」を交配して作った品種で、1959年に命名登録されました。

もう、62年も前に開発された品種なのです。名前は父母品種の一字ずつを取ってつけられました。

ナシの栽培面積の約40%を占める、我が国を代表するナシ品種です。

果実品質はニホンナシの中で極上です。果実の大きさは300g前後で、糖度は12%前後、収穫期は関東で8月中下旬ですが、近年施設栽培が定着しており、7月頃より店頭に並び始めます。

果実の色は「豊水」のような赤ナシに比べると、不十分な中間色タイプで、特に施設で栽培すると果面がまだら状になることもあります。

ナシ「豊水」

豊水

「豊水」は1954年に「幸水」×「イ-33」(「石井早生」×「二十世紀」)の交配組み合わせで、育成された品種で、1972年に命名登録されました。

実は、8年前までは、交配組合せは不明となっていましたが、2003年に、果皮色、自家不和合性遺伝子型、DNA解析などの調査が行われ、「幸水」×「イ-33」の交配により育成された可能性が非常に高いことが分かりました。

DNAによる親子判別は、こんなところでも役に立っているのですね。「豊水」は、ニホンナシの栽培面積の約25%を占める主要品種の一つです。

果実の大きさは400g程度で、糖度は12~13%、やや酸味を感じますが、食味濃厚で品質極上です。年次や地域によりみつ症状が発生する場合があります。

ブドウ「安芸クイーン」

安芸クイーン

1973年に「巨峰」に「巨峰」を交配して作った品種で、1993年に品種登録されました。

果粒は倒卵形で果粒重は「巨峰」なみの大きさで13~15g程度です。肉質は、塊状(「キャンベル」のようなかみ切れない肉質)と崩壊性(「甲斐路」のようなかみ切れる肉質)の中間です。

糖度・酸とも「巨峰」と同程度で、糖度18~20%、酸含量0.4~0.5%程度で食味が良い品種です。アメリカ系ブドウの持つ香りの特徴である『フォクシー香』があります。

食べ頃は「巨峰」とほぼ同時期か、あるいはやや早く、育成地の広島県東広島市では、8月中下旬です。
「安芸クイーン」は鮮紅色のきれいな赤色が魅力ですが、暖い場所ではうまく着色しないことも多く、逆に、寒冷地では紫色になってしまう場合があります。

果実を多く着けすぎないこと、着色期の房に光を当てること、樹を落ち着かせること、夏の窒素吸収を抑えることなど、栽培管理がやや難しい品種です。美味しく食べるには、苦労がいります。

研究センター