春を迎えてすることは・・

ニホンナシの花
初春から初夏にかけては、品種改良にとってとても重要な交配の季節だ。
果樹研で対象としている樹種でいえば、2月下旬のウメから始まって、アンズ、スモモ、モモ、ニホンナシと続き、そのあとにカンキツ、リンゴ、カキが、そして6月にブドウ、クリが交配の時期を迎える。
交配とは、開花前の花の花弁を外し、雄しべを取り去り、雌しべに花粉を付けて、他の品種の花粉がつかないように袋をかける一連の作業である(例外もあるが、その説明は別の機会に)。開花の期間は決して長くなく、天気にも左右されるため(雨の日は無理)、限られた期間の中で、老眼ではとてもできないような精密な手作業を、延々と続ける。
交配親を決めるには・・
どの品種とどの品種を組み合わせて実生(子供)を作るかは、育種家(品種育成を行っている研究者)の判断に任されている。育種家は目標とする形質(熟期、糖度、酸度、肉質、病害虫抵抗性など)が、どのように遺伝するかを勘案したうえで、親とする交配組み合わせを決める。そこでは、今までの交配データに基づく確率論的な判断が勿論必要であるが、それとは別に育種家の直感というかセンスというかそのような感性も重要なような気がする。
いろんな品種(及び系統)の特性を日頃から観察し、交配親に使ってみたいと思う品種をどれだけ自分の引出しにしまっておけるかということと、引出しにしまってある似たような特性を持つ品種の中からどれとどれを組み合わせるかということ。果樹研究所では、各樹種ごとに数百の品種・系統を保存しているが、すべてはその観察から始まる。
苦労していることは・・

ブドウの花
果実の種の数は樹種によって異なるため、一定の実生数を得るために必要な交配数が違ってくる。ニホンナシやリンゴは一つの果実に平均すると8個程度の種が入るが、ウメ、モモ、スモモなどでは果実に種が1つしかない。したがって、例えば100個の実生を得るためには、ニホンナシやリンゴだと十数個の花(雌しべ)に交配すればいいが、核果類だと百数十個の交配が必要である。また、ウメなどは寒い時期の交配であり、交配した花がすべて種をつけるとは限らない。
ブドウでは、通常の栽培管理では種が入りにくくなるため、交配に使う樹はせん定を弱くするなど別の管理が必要となる。
また、交配には、神経を使う。いろんな品種の花粉を交配に用いるため、花粉を間違えたり花粉が混じったりしないように、細心の注意が求められる。
とにもかくにも、交配は大変でかつ重要な作業なのである。












