果樹研究所

一押し旬の話題

2014年7月14日

まずは、バラ科の果樹から

ビワ
ビワの果実

果物は、年中店頭にいろいろと並んでいるが、日本では1年の区切りが4月から始まる「年度」となっているせいか、果物の季節は5月のビワから始まるという印象が強い(ここでは果樹になる果実を「果物」と言っています)。
勿論、晩生(おくて)のカンキツが、年度明けの4月に市場に出回っているが、年内のウンシュウミカンから始まって、年明けの中晩柑とずっと続いているので、果物としての初物という感覚には、なかなかならない。

この時期は、ビワに続いて、ウメ、アンズ、オウトウ、モモ、スモモと核果類(種子が堅い殻に包まれている果物の種類)の果物が次々と出回ってくる。考えてみると、みんな、バラ科の果樹だ。ちなみに、バラ科に属する果樹は、ほかにもいろいろあり、ニホンナシ、セイヨウナシ、カリン、マルメロ、リンゴ、キイチゴなどもバラ科だ(果樹ではないが、イチゴもバラ科です)。

かつての江戸っ子は、初物が好きだった。その代表格が初鰹であり、有名なのは、俳人・山口素堂の「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という句である。また、「初物を食べると七十五日長生きする」とも言われたりしたし、「女房を質に入れても初鰹」という物騒な川柳まであった。

その当時の人々は、それほどまでに初物を珍重した。それは、季節の折々の食べ物を味わうことで、季節の移ろいを実感し、生きていることの喜びとそれを与えてくれる自然の恵みに対する感謝の心があったのだと思う(勿論、人より早くという競争心が働いていたのは言うまでもないが)。その流れが、今の日本人にも息づいていると思っている。
今は、施設栽培や鮮度保持の技術開発が進み、いろいろな果物がいろいろな時期に食べられるようになっているが、それでも旬のはしりをいち早く食べることはどこか江戸時代の粋につながる心であり、季節の変化を舌で感じる瞬間でもある。

早生のモモ品種「ひめこなつ」
早生のモモ品種「ひめこなつ」

品種改良の目標の一つとして早生(わせ)化があるが、最近では、早生より収穫期の早い極早生の品種も育成されてきている。
モモで言えば、「ひめこなつ」という品種を農研機構果樹研究所で育成している(2009年に品種登録)。この品種の特徴は、花が咲いてから約2ヶ月で収穫でき(育成地のつくばでは6月上中旬)、果実は小さいが糖度は12%を超える。また、日本の生食用のモモはほとんどが白肉であるが、この品種は黄肉であることも特徴の一つとなっている。
研究所の「ひめこなつ」を6月初めに食べた。これが、今年最初に食べたモモだったが、「この時期にこれだけ糖度がのったモモを食べられるのか」、「モモの品種改良もここまで進んだのか」、と感動した。

黄肉のモモ品種「つきあかり」
黄肉のモモ品種「つきあかり」

果樹研究所では、黄肉のモモとして、ほかに「つきあかり」(2010年品種登録、収穫期は育成地で7月下旬~8月上旬)、「つきかがみ」(2011年品種登録、収穫期は育成地で8月中下旬)を育成している。どの品種も、流通にのって市場に出回るようになるには、まだ時間がかかると思うが、ネット等で見かけたら、是非味わって欲しい品種である。

「好きな果物」の調査では、常に上位にランキングされるモモ。
好きな理由は人それぞれあるだろうが、モモ特有のあの甘い香りとジューシーで軟らかな食感が、人を引きつける魅力だろう。
これから盛期を迎えるモモの季節、思う存分モモを満喫していただきたい、たまには奮発してちょっと高めのモモを買って。
梅雨と重なる、果物作りには不適なこの時期に、消費者の皆さんに美味しいモモを届けるため、いろんな工夫をしてモモを作っている果樹農家の方々の努力に感謝しつつ・・・。

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