ビワ「茂木」の結実状況
柔らかいうぶ毛をまといながら、専用のパック容器に1個1個鎮座(ちんざ)して、光を反射させている橙黄色の果実。
ビワ(枇杷)を食べる時に、ほとんどの人が思い浮かべることは、
「種がなかったら、もっと食べやすいのにね。」
ではないかと思う。
日本食品標準成分表2010によると、ビワの可食部は70%となっている。
可食部が少ないものとしては、ザクロの45%、ブンタンの50%、バナナやイヨカンの60%などであり、
逆に可食部の多いものとしてはスモモ・カキ・サクランボが90%以上、リンゴ・モモ・ナシ・ブドウが85%となっている。
さしずめ、皮ごと食べられて種がない「シャインマスカット」なら、1粒ならば可食部100%というところか(一房なら、軸が残る)。
しかし、「ビワの方がバナナより可食部が多いなんて、本当? おかしくない?」と思ったのでは?
食品標準成分表では、『廃棄率は、原則として、通常の食習慣において廃棄される部分を食品全体あるいは購入形態に対する重量の割合(%)で示す』と定義されており、『可食部は、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位を除いたものである』となっている。
つまり、上記の可食部の数字は、『重さの割合』なのである。
皆さんが感じているのは、たぶん、食べた時の感覚からくる可食部と廃棄部の体積(容積)の割合だと思うので、そこに上記数字との違和感が生じているのではないか。
ビワ「希房」の果実
「種がなかったら、もっと食べやすいのにね。」という皆さんの希望に応えるため、千葉県農林総合研究センターでは世界初の種なしビワ「希房(きぼう)」を育成し、2006年に品種登録した。種なしになる仕組みは、かって一時期作られていた『種なしスイカ』と同じで、「希房」が3倍体(染色体のセットが3つ)だからだ。
3倍体だとどうして種なしなるかについては、植物の生殖の説明が必要であり、ここでは説明しないが、要は雌しべのなかにある卵細胞が種子(胚)を作る機能を欠いているということだ。
このビワなら、そのままかぶりつくことができる。
なお、ビワの可食部が体積的にどれくらいあるかは、自宅にある計量カップを使えば、大まかな値を知ることができる。できれば、10ml(10cc)刻みの目盛りが付いている計量カップが望ましいが、(1)水を計量カップに入れ、どこかの目盛りに合わせる、(2)その計量カップに、ビワを入れた時の水の目盛りを読む(ビワが完全に水中に埋没しないようなら、(1)の水の量を増やす)。(3)それらの目盛りの差(水の目盛りの増えた量)が、ビワの体積となる、(4)ビワを食べた後、廃棄部である皮と種で、同様のことを行い皮と種の体積を量る(はかる)、(5)皮と種の体積をビワの体積で割れば、廃棄部の割合がわかる。可食部は、全体から廃棄部を引いた残りとなる。
ちなみに、キッチンばかりがあれば、可食部と廃棄部の重量比も量ることができ、同じ果実で体積比と重量比の比較ができる。
果物の表記について
話は変わるが、今回のタイトルはビワを漢字表記とした。
果物の名前の表し方としては、漢字、ひらがな、カタカナの3種類がある。学術的には、作物名はカタカナ表記とすることが普通であり、小欄ではそれに基づきカタカナ表記としている。
それが、行政用語になると、ひらがな表記になる。果樹農業振興特別措置法施行令(昭和36年5月27日政令第145号)第二条では、政令で定める果樹を、かんきつ類の果樹、りんご、ぶどう、なし、もも、おうとう、びわ、かき、くり、うめ、すもも、キウイフルーツ及びパインアツプルとしており、これら13種類の果樹が政令指定果樹となっている。今年の4月に、新たな果樹農業振興基本方針が策定されたが、文中の果物表記は上記のようになっている。
でも、梨、桃、柿、栗、梅などは、カタカナ、ひらがなより漢字表記の方が直感的かなと思う。
枇杷 びわ ビワ --- アナタは、どの表記が好きですか?
柑橘、林檎、葡萄、桜桃、李、杏、油桃、扁桃、温州蜜柑、檸檬、八朔、伊予柑、文旦、日向夏、金柑、無花果、石榴、胡桃、銀杏・・・。漢字表記って、やっぱり趣(おもむき)があると思いませんか?