果樹研究所
果樹の災害対策集(改修用)
ニホンナシの場合
《被害が激しい場合》
- かなりの太枝まで、雹があたった衝撃で、樹皮が傷んでいるため、蒸散抑制剤を全面に散布する。特に、傷害を受けている部分は、枝の上面であるため、下から吹き上げるのではなく、上から下に向けて散布することが好ましい。なるべく、被害を受けた直後に実施することが必要である(ただし、現在果樹用に農薬登録されている蒸散抑制剤はない。)。大きな傷口には、接ぎロウなどの癒合促進剤を塗る方が胴枯病を防ぐためにも確実な対策といえる。
- 折れた枝の切り口がささくれ立っているので、水分の蒸散を防ぎ、折損面の癒合を良くするために、剪定ばさみで切り返し、大きな切り口には接ぎロウを塗る。ある程度の太い枝でも、回復の可能性が無いほどに傷害を受けた枝は切り返す。
- 枝の陽当たり側に白塗剤などを散布または塗布し、直射光による樹皮の温度上昇を防ぎ、日焼けを軽減する。
- 果実の着き具合によっては、障害を受けたものを除き、着果負担を軽くする。ただし、摘果しすぎないように注意する。
- 新梢が発生し始めたら、アブラムシなどの虫や病気を防ぐために防除を徹底し、来年の結果母枝になるよう誘引する。
- 結実数が少ない場合や、ほとんど落果してしまった場合、新梢が勢い良く伸び、樹形が乱れるので、折れないように丁寧に誘引する。
- 樹体が衰弱して、新梢の伸びが悪い場合や、新葉の展葉が遅い場合は、チッソを多く含んだ液肥を散布して生長促進に努める。
- 結実数が少なすぎて秋口に新梢が充実しない場合は、リン酸やカリを多く含んだ液肥を散布して、新梢の充実を図る。
- 幹や枝の被害状況に応じて程度を調節する(例えば、傷口だけに接ぎロウを塗ったり、結実数が確保できる場合は、着果負担がかかりすぎない程度に摘果するなどの調整が必要である。)。
《被害が軽微な場合》
- 被害程度が軽い場合は、結実量を調節することを中心に管理する。
- 枝折れがある場合は、切り返す。
- 病虫害の防除を徹底する。
- 収穫期になったら傷害果が混ざらないよう果実を厳選し、出荷する。
- その他、通常の栽培管理を行う。