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食品ナノテクノロジープロジェクト

(更新:2010年08月25日)

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I-(1)-4 抗酸化ナノ食品素材の製造技術の開発

(担当:中嶋光敏)


目的

高圧乳化等を用いて抗酸化ナノエマルション等の食品素材の製造技術の開発と中課題I-(2)以降の課題の供試材料の製造、また製造技術の評価を行う。初期の2年は平均粒径が10μmから数100nm の粒子開発を目指し、最終目標として10nmオーダーを目指す。抗酸化物質としてはβ-カロテンやリコピン等のカロテノイドを主たる対象とする。乳化技術と安定なナノ粒子が得られる油相や乳化剤の選定、特に界面特性の解明によりサイズ制御が可能な実用的ナノ分散系の構築を図る。

研究内容

  • β-カロテン分散系

    分散相に大豆油、連続相PGE(polyglycerol esters of fatty acid)を用い、予備乳化後に高圧乳化処理を行い170~270nm(100MPa)のβ-カロテン分散系を作製した。PGE重合度増大により粒径が顕著に減少した(図1)。PGE濃度および乳化圧の増加は粒径の減少を引き起こすことが示された。

    図 高圧乳化法による6種のPGEを用いたβ-カロテン分散系の粒度分布(乳化圧100MPa)


    攪拌下でPGEを溶解した連続相にβ-カロテンを溶解したアセトンを加え、アセトンを蒸発乾燥する溶媒置換法により平均粒径33.5~202nmのナノ分散系を得た。PGE重合度増大により平均粒径は減少し(図2)、平均粒径は4℃で8週間安定であった。TEMによる形態観察を行った。

    図 溶媒置換法による6種のPGEを用いたβ-カロテンナノ分散系の粒度分布

    図 溶媒置換法によるPGEを用いたβ-カロテンナノ分散系のTEM画像


    分散相にヘキサン、連続相にPGEを用い、予備乳化後に高圧乳化処理を行い減圧下でヘキサンを液中乾燥する液中乾燥法により平均粒径45.6~212nmのβ-カロテンナノ分散系を得た。ML(ポリグリセリンラウリン酸エステル)型では、重合度の高いPGEにおいて粒径が顕著に減少した(図4)。

    図 液中乾燥法によるPGEを用いたβ-カロテン分散系の粒度分布


    高圧乳化法蒸発乾燥法によりβ-カロテンナノ分散系を作製し、粒径の異なる評価サンプルをI-(2)I-(3)I-(4)の研究グループに提供した。

    作製した分散系の胃小腸モデル溶液処理後、粒径はPGE重合度増大に伴いより高い安定性を示した。β-カロテン保持率は粒径の減少に伴い増大し、MO500(ヘキサグリセリンモノオレエート)・MO750(デカグリセリンモノオレエート)で85%以上であった。消化液処理後超遠心し得られたβ-カロテンミセルへのβ-カロテン取り込み率は粒径の減少により増大し(図5)、リパーゼならびに胆汁酸がβ-カロテンのミセルへの取り込みに関与していることが明らかとなった(図6)。

    図 β-カロテンミセル取り込み率への粒径の影響(ControlとDigestate)

    図 β-カロテンミセル取り込み率へのリパーゼおよび胆汁酸濃度の影響


  • DHA高含魚油エマルション

    マルハニチロホールディングス中央研究所の協力を得て、高圧乳化によりDHA22%高含魚油エマルションを70 - 400nmの範囲で調製できた。

参考文献