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食品ナノテクノロジープロジェクト

(更新:2010年08月25日)

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II-(1)-4 マイクロ・ナノ化学システムを用いる単一ナノ粒子分析法の開発

(担当:火原彰秀)


目的

100nmから数μmサイズの固体粒子あるいは液体粒子(液滴)を単一粒子として分光学的に解析する手法を開発する。具体的には、粒子分散溶液を搬送して検出点まで流すマイクロ・ナノ化学システムを用いて、高い検出効率を目指す。また、現在主に濃度定量に用いられている熱レンズ顕微鏡を改良し、単一粒子を流れの中で解析する手法を開発する。

図 熱レンズ顕微鏡によるナノ粒子カウンティングの原理


研究内容

  • 熱レンズ顕微鏡によるナノ粒子の計数

    単一ナノ粒子計測のためのマイクロ・ナノ流路のデザインおよび流体制御システムを図に示す。ナノ流路へ試料を導入するために、マイクロ流路を接続して、マクロ空間からマイクロ・ナノ空間へ段階的に小さくなっていく構造にした。また、圧力損失が大きく、通常のポンプでは困難な低流量(pL/分)での送液を可能にするために、空気圧力コントロールによる流体制御システムを新たに開発した。

    これらの手法と、開発した熱レンズ顕微鏡を組み合わせて、モデル試料であるポリスチレンナノ粒子を一つ一つ計測した。この原理は熱レンズ効果に基づいており、理想的には励起光(波長266 nm)での各ナノ粒子の吸光度に応じて信号強度が大きくなる。ナノ流路(幅・深さともに約1000 nm)での測定結果を図2に示す。図3左より確かにナノ粒子が測定部を通過したときに、パルス的な信号が観測された。図3右より、このパルス数はナノ粒子の濃度に比例することから、確かにナノ粒子由来の信号であることがわかった。また、観測されたパルスの数は、粒子の濃度と流速から計算される導入粒子数(図中の理論線)とほぼ一致することがわかり、ナノ流路にすることで100%の検出効率を実現できることがわかった。今後は、流路構造の最適化により、信号強度のばらつきを抑えることを検討するとともに、感度の向上を図る。

    図 測定システム

    図 信号波形(左)と検量線(右)

参考文献