果樹研究所

一押し旬の話題

2014年4月11日

美味しさの感覚

 

「!!!!」

 本当に美味しいと思える果物に出会えた時に感じる率直な感想。

あえて表現すれば、「言葉にならない至福の時」とでも言えるかもしれない。
いつもいつも自分にとってどんぴしゃの果実に出会えるわけではないが、出会った時のあの感動。 

その季節、季節で出会う果物たち。
完熟した果実の皮を手でむいて、汁をダラダラ垂らしながらモモにかぶりつく時、
暑い、暑いと言いながら、ひんやりしたニホンナシの瑞々しさを味わう時、
宝石のようなブドウの一粒一粒を口に運び、その味と食感を堪能する時、
膚に涼しさを感じる季節になって、甘酸バランスのとれた濃厚な味のリンゴをかじる時、
皮をむくたびに芳香が部屋に広がり心地よい気分になりながら、小房に分けたカンキツを頬張る時、
大げさかもしれないが、幸せな気分になれる。

シャインマスカット
シャインマスカット

今の時代の日本には、いろいろな食べ物が満ちあふれ(私の小さい頃はそうではなかった)、食べ物は選り取り見取りだ。食欲を刺激するグルメ番組も多い。そんななか、甘さに対する希求心は、人類の根源的な願望だと思う。かっての大昔は、甘い食べ物といえば果物だった。品種改良によって、昔に比べれば格段に甘くなって美味しくなった果物が世の中に出回っている。

でも、何が美味しいかは、人によって異なる。果物ひとつとっても、例えばモモでも固いモモが好きな人も意外と多いと聞く。私は、甘さはほどほどでしっかりした食感の欧州系ブドウが好みだが、一般的には甘いブドウが好まれる。また、果樹研究所では、さくさくした果肉で多汁なカキ「太秋」を育成しているが、『あれはカキではない』と言う人もいる。

太秋
太秋

果物に対する思いは様々で、そこには各人の郷愁も影響してくる。美味しさの基準も人それぞれだ。そのような多様なニーズに対して満足してもらうため、果樹の育種家(品種育成を行っている研究者)は、自分の眼と舌を信じ、長い年月をかけて(交配から品種登録まで早くて十数年かかる)、新しい品種を創り出してゆく。新しい品種を見かけたら、その裏で行われていた努力にも思いを馳せつつ、新しい出会いを楽しんでいただきたい。

果物にまつわる思いをこれからいろいろ書いていきたいと思うので、お付き合いいいただければ幸いである。

 

長谷川前所長からの一言

皆様と果物との架け橋になればと思い、一押し旬の話題を書き続けて参りました。
私、このたび果樹研究所を去ることになりました。ホームページを通じて、これまで、皆様から色んなご意見を頂戴し、この一押し旬の話題の中に生かせるように努めて参りました。

皆様には、これからも,果物大好き人間、また、果樹研究所応援団になっていただけることを願っております。
長い間、ご支援ありがとうございました。

(長谷川美典)

 

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