地球温暖化によるリンゴ及びウンシュウミカン栽培適地の移動予測

要約

リンゴ及びウンシュウミカン栽培に対する地球温暖化の影響の規模を年平均気温の変動から時系列的に推定した結果、栽培適地は徐々に北上し、21 世紀半ばには、現在の主な産地の多くが気候的に不利になる可能性がある。

  • キーワード:リンゴ、ウンシュウミカン、温暖化、メッシュ気候図、適地判定
  • 担当:果樹研・生理機能部・環境応答研究室
  • 連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・栽培、農業気象
  • 分類:行政・参考

背景・ねらい

大気の温室効果ガス濃度上昇に伴う地球温暖化が予測されているが、気候への依存性が高い果樹生産は、農業の中でもとくに大きなインパクトを受けると考えられる。研究者、行政、生産者がその対応策を練るためには、温暖化の影響の有無のみならず、想定される影響の規模やタイムスケジュール等を地域ごとに示す必要がある。そこで、わが国の果樹の中で栽培面積が大きいリンゴ及びウンシュウミカンについて、今後 60 年間の生産環境への影響を約 10×10km メッシュ単位で推定する。

成果の内容・特徴

  • 気候予測値としては、4つの全球気候モデルの予測結果をメッシュ化した「気候変化メッシュデータ」(Yokozawaら、2003)を、現在の値は「メッシュ気候値 2000 」(気象庁、2002)を解析に用いた。デ-タベース内の気温の値から各メッシュ、年代ごとに4つの気候モデルによる値を平均し、かつ 12 カ月の値を平均した。この計算値から所定の温度域に該当するメッシュを抽出し、地図上に図示するプログラムを作成し、解析した。
  • リンゴ栽培に適する地域に係る年平均気温として「果樹農業振興基本方針」(農水省、2000)に示されている温度域は6~14°Cである。現在この地域は道北、道東及び西南暖地の平野部を除く広い地域に広がっているが、2040 年代に東北南部、2060 年代には東北中部の平野部まで 14°C 以上となる一方、北海道はほぼ全域が適地になると予想される。この温度域は現在の主産地よりもかなり広いと考えられたため、より狭い温度域である7~13°Cについても検討した。この温度域は、道南~中部地方山間部等,現在の主産地と概ね一致しているが、2060 年代には東北地方の平野部のほぼ全域が範囲外となり、現在の主産地の多くが、暖地リンゴの産地と同程度の気温になる可能性がある(図1)。
  • 「果樹農業振興基本方針」によるウンシュウミカン栽培に適する地域の年平均気温は 15~18°C である。この温度域は西南暖地の沿岸部が主に該当し、現在の主産地と概ね一致しているが、2020 年代に山陰地方等の日本海沿岸、2040 年代に関東及び北陸の平野部全域、2060 年代には南東北の沿岸部まで適地となる(図2)。一方、18°C 以上の地域は現在、南西諸島と九州の南端部のみであるが、2060 年代には現在の主産地の多くが 18°C 以上となり、中晩柑の産地と同等かより高温となるものと考えられる。

成果の活用面・留意点

  • 対策研究計画の策定、生産者の栽植計画立案あるいは地域経済へ与える影響解明の際の基本デ-タとして活用できる。
  • 全球気候モデルには温暖化の進行が速いものから遅いものまであるが、ここで利用している4つのモデルは中程度の進行速度のものである。
  • この予測は年平均気温を基準としたものであり、適地と判定されても冬季の極温、降水量、日射量あるいは土壌等から多角的な検討が必要である。
  • すでに栽植されている果樹に与える温暖化の影響については今後の研究課題である。

具体的データ

図1 地球温暖化によるリンゴ栽培に適する年平均気温(7~13°C)の分布の移動。

 

図2 地球温暖化によるウンシュウミカン栽培に適する年平均気温(15~18°C)の分布の 移動。

その他

  • 研究課題名:果樹農業に対する地球温暖化の影響予測モデルの開発とその影響評価
  • 課題ID:09-01-05-*-02-02
  • 予算区分:農水委託金・地球温暖化
  • 研究期間:2002~2006年度
  • 研究担当者:杉浦俊彦、黒田治之、杉浦裕義
  • 発表論文等:1)杉浦ら (2002) 園学雑71(別1):223
                      2)杉浦・黒田 (2002) 園学雑71(別2):278
                      3)杉浦 (2002) 近年の気候変動の状況と気候変動が農作物の生育等に
                       及ぼす影響に関する資料集(農水省):135-137