梅酒および梅ジュース加工に適したウメ新品種「翠香」(すいこう)

要約

ウメ新品種「翠香」は、「月世界」に「梅郷」を交雑して育成した品種である。梅酒等飲料用加工に適しており、梅酒・梅ジュース製品は他の主要栽培品種にはない芳香があり、品質は良好である。

  • キーワード:ウメ、新品種、梅酒、梅ジュース
  • 担当:果樹研・ナシ・クリ・核果類研究チーム
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

わが国におけるウメ果実の用途は主として漬け梅用と飲料用に分けられるが、梅酒や梅ジュースとして加工される飲料用はウメの主要な消費形態となっている。また、近年、梅酒需要の高まりとともに青梅を用いた梅酒だけでなく完熟果を利用した梅酒の製造など、味を意識したこだわりのある製品が増加している。そこで、飲料用加工適性に優れたウメ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 1989年(平成元年)に農林水産省果樹試験場(現:農研機構果樹研究所)において、「月世界」に「梅郷」を交雑して育成した品種である。1999年(平成11年)から系統名「ウメ筑波7号」としてウメ第2回系統適応性検定試験に供試して検討した結果、2009年(平成21年)1月の同試験成績検討会において新品種候補として適当であるとの結論が得られた。2009年(平成21年)7月15日に品種登録出願し、同年9月24日に「翠香(すいこう)」として出願公表された。
  • 短果枝の着生はやや多く、花芽の着生も多い。開花盛期は育成地(茨城県つくば市)で3月9日頃であり、「白加賀」より6日程度早く、「南高」とほぼ同時期である(表1)。自家不和合性であるが、花粉を有し、「南高」とは交雑和合性である。収穫盛期は育成地で6月下旬であり、「白加賀」とほぼ同時期で、「南高」より3日程度早い。結実は「白加賀」より優れるが、「南高」には劣る。
  • 果形は楕円形、果実重は35g前後で、「白加賀」よりも3g程度、「南高」よりも10g程度小さい。核は小さく、核重率は6%程度であり、「白加賀」や「南高」よりも1~2%程度低い。酸含量は収穫盛期で6g/100ml程度になる。ヤニ果が発生し、外ヤニ果の発生率は11%程度、内ヤニ果は44%程度で「白加賀」より少ないが、「南高」より多い(表1図1図2)。
  • 梅干し製品の品質は「南高」に劣るが、梅酒・梅ジュース製品は他の主要栽培品種にはない芳香があり、品質は良好である。特に完熟果を使用した場合、酸が高く香りが強い上質の梅酒・梅ジュースが製造できる(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 既存のウメ栽培地域で栽培が可能である。
  • ヤニ果が発生するため梅干し用としては適さない。果実の用途は梅酒・梅ジュース等の飲料加工用とする。
  • かいよう病および黒星病には罹病性であるが、通常の薬剤散布により防除できる。
  • 苗木は2010年秋期より販売される予定である。

具体的データ

表1 育成地(茨城県つくば市)における「翠香」の特性

表2 「翠香」の梅酒の品質

図1 「翠香」の結実状況

図2 「翠香」の果実

その他

  • 研究課題名:高収益な果実生産を可能とする高品質品種の育成と省力・安定生産技術の開発
  • 中課題整理番号:213e.1
  • 予算区分:基盤
  • 研究期間:1990年~2008年度
  • 研究担当者:安達栄介、山口正己、土師 岳、八重垣英明、末貞佑子、三宅正則、西村幸一、中村ゆり、京谷英壽、鈴木勝征、木原武士、内田 誠、福田博之、小園照雄