オーラプテンを高含有するCTV免疫性のカンキツ新品種「オーラスター」

要約

カンキツ新品種「オーラスター」は、カラタチ、ハッサクおよび「晩白柚」に由来する品種である。生食には適さないが、オーラプテンを高含有し、カンキツトリステザウイルス(CTV)に免疫性であり、加工用または育種素材として活用できる可能性がある。

  • キーワード:カンキツ、新品種、オーラプテン、カンキツトリステザウイルス
  • 担当:果樹研・研究支援センター・遺伝資源室
  • 代表連絡先:成果情報のお問い合わせ
  • 区分:果樹・育種
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

カンキツ属近縁植物のカラタチはカンキツトリステザウイルス(CTV)に対する免疫性を有し、発ガン抑制作用を示す機能性成分の一つであるオーラプテンを高濃度に含有するが、独特の臭気と強い酸味のため食用には不向きである。そこで、カラタチとカンキツ属植物の雑種に香りがよく大果である「晩白柚」を交雑し、カラタチ臭が少なく、オーラプテン高含有およびCTV免疫性を併せ持つ品種を育成する。

成果の内容・特徴

  • 1994年(平成6年)に農林水産省果樹試験場興津支場(現:農研機構果樹研究所カンキツ研究興津拠点)においてCTV免疫性の属間雑種「H・FD-1」(「ハッサク」×「ヒリュウ」)に「晩白柚」を交雑して獲得した実生から選抜した系統である。本品種は広範な普及性には乏しいものの、オーラプテン高含有でCTV免疫性を有することから、加工用品種、育種素材などとして活用される可能性があり、平成21年度果樹試験研究推進会議において品種登録を出願することが決定された。2010年(平成22年)7月12日に品種登録出願し、2011年5月24日に「オーラスター」として品種登録された。
  • 樹勢は強く、樹姿は直立性を示す。枝は太く、長く、枝の粗密はやや粗である。枝梢にはトゲが多く発生する(表1)。葉身は極めて大きく、ほとんどが三出複葉である。そうか病には強いが、かいよう病にはやや罹病性である。カラタチ由来のCTV免疫性を有している。
  • 果実は平均400g程度の扁球形で、小型のブンタンタイプである(図1)。果皮の色は黄橙色、厚さは約13mm程度で剥皮は困難である。1月上旬頃に完全着色し、3月上中旬に成熟期となる。果肉は黄色で、比較的軟らかく、果汁の量は中程度である。果実成熟期の糖度は11%程度、クエン酸含量は2.2%程度であり酸味が強く、苦味を有する。カラタチ特有の臭気はほとんど無い。平均含核数は50粒程度と多く、種子は単胚性である(表1)。
  • 果皮、果肉ともにオーラプテンを高濃度で含有し、特に、果肉における含有量は、カラタチよりは低いものの、一般的に生食されるカンキツ類と比較して著しく高い(表2)。

成果の活用面・留意点

  • 果実は生食用には適さないが、加工用途として、オーラプテンを豊富に含む果汁を添加して機能性成分の強化を図ること、オーラプテン高含有の厚い果皮を利用することなどが想定される。
  • 健全花粉を有し、単胚性で含核数が多いため交雑実生の獲得が容易なことから、CTV免疫性およびオーラプテン高含有の新品種育成の育種親としての利用が期待される。
  • 苗木は2011年秋期より販売される予定である。

具体的データ

育成地における「オーラスター」の特性

「オーラスター」の果実オーラプテン含量の比較

その他

  • 研究課題名:果樹遺伝資源の特性評価及び育種素材化
  • 中課題整理番号:511a
  • 予算区分:基盤、異分野融合
  • 研究期間:1994~2010年度
  • 研究担当者:吉岡照高、根角博久、吉田俊雄、國賀武、野々村睦子、中嶋直子、喜多正幸、太田智、滝下文孝
  • 発表論文等:根角ら「オーラスター」品種登録 2011年5月24日(第20789号)