サツマイモ「ムラサキマサリ」の2分割いも付き苗の調製と移植栽培による収量性

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要約

「ムラサキマサリ」の30~100gの種いもを横2分割し50穴深型セルトレイで3~4週間育苗する。このいも付き苗を3月下旬~4月下旬に移植し栽培すると慣行挿苗栽培と同等以上の収量が得られ、株当たり上いも数が増え、奇形いも発生率は約5%である。

  • キーワード:サツマイモ、ムラサキマサリ、育苗、セルトレイ、直播、移植、収量
  • 担当:九州沖縄農研・九州畑輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0986-24-4279
  • 区分:九州沖縄農業・畑作、バイオマス
  • 分類:研究・参考

背景・ねらい

サツマイモ品種「ムラサキマサリ」は種いもを直接圃場に植え付ける直播栽培に適した品種である。しかし、直播栽培においては圃場出芽の斉一性を確保することが課題となっている。セルトレイ育苗により出芽させた「いも付き苗」を移植栽培することで、圃場出芽の不揃いを抑制し、直播栽培の潜在的な多収性を解明する。4月下旬に挿苗する慣行挿苗栽培および催芽処理無しの丸いも直播栽培と収量性(上いも収量、株当たり上いも数、奇形いも発生率、親いも肥大発生率)を比較する。

成果の内容・特徴

  • 「ムラサキマサリ」の30~100g程度の種いもを横2分割し、50穴深型セルトレイへ培土とともに植え付け、25°Cで培養すると、10日で出芽率は約30%、2週間で約60%、約3週間で95%程度となり(図1) 、3~4週間の育苗により2分割いも付き苗を調製できる(写真1) 。
  • 畦幅90cmの高畦条件で、「ムラサキマサリ」2分割いも付き苗を3月下旬~4月下旬に移植して栽培すると、欠株のない栽培が可能である(本試験における全てのいも付き苗移植区(4.5m×4mの処理区8区)の欠株率0%)。4月下旬に挿苗する慣行挿苗栽培と比較して収量が同等以上となる(表1)。
  • 「ムラサキマサリ」2分割いも付き苗の移植栽培により、株当たり上いも数が慣行挿苗栽培よりも増加する(表1)。催芽処理無しの丸いもの直播栽培と比較して、2分割いも付き苗の移植栽培における親いも肥大発生率および親いも乾物重は低い(表2) 。
  • 「ムラサキマサリ」2分割いも付き苗の移植栽培では、収穫したいもの一部に奇形いも(とぐろいも)が発生する(個数発生率約5%、表2) 。
  • 「ムラサキマサリ」2分割いも付き苗の移植栽培は、慣行挿苗栽培よりも早い時期に移植することにより、収量向上が期待できる(表1)。早期移植により親いも肥大および奇形いも発生が抑制される傾向がある(表2) 。

成果の活用面・留意点

  • サツマイモ直播栽培の長所を活かした栽培技術開発のための研究素材となる。
  • 2分割いも付き苗の移植栽培では、種いも上方につる根いもが多く付くように深めに移植する(試験では深さ約15cmとした)。
  • 2分割いも付き苗のセルトレイ内出芽は不揃いでばらつくため、出芽の早い遅いによりグループ分けして移植するなどの工夫が必要である(試験では各トレイから約半数のいも付き苗を移植した)。

具体的データ

図1 2分割いも付き苗の出芽率の推移

写真1 培養2 3 日目のセルトレイ(左)および2分割いも付き苗の形状(右)

表1 2分割いも付き苗移植栽培、丸いも直播栽培および慣行挿苗栽培における上いも収量と株当た  り上いも数の比較

表2 2分割いも付き苗移植栽培と丸いも直播栽培における親いも肥大と奇形いもの発生状況

その他

  • 研究課題名:九州地域における畑地高度利用のための畑輪作システムの開発
  • 課題ID:211-k
  • 予算区分:基盤、委託プロ(バイオマス)
  • 研究期間:2006~2008年度
  • 研究担当者:安達克樹、杉本光穂、大嶺政朗、澤村宣志、石井孝典、小林透