スクミリンゴガイ用忌避材と忌避材を利用した産卵抑制技術

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要約

皮膜形成型樹脂と銅粉を混合したスクミリンゴガイ用忌避材を、スクミリンゴガイが棲息する河川・水路等の水面直上の壁(護岸・岸壁)に塗布することにより、スクミリンゴガイの水面上への移動が困難となり、産卵を抑制できる。

  • キーワード:スクミリンゴガイ、忌避材、産卵抑制、銅粉
  • 担当:九州沖縄農研・九州水田輪作研究チーム
  • 代表連絡先:電話0942-52-0692
  • 区分:九州沖縄農業・水田作、九州沖縄農業・病害虫
  • 分類:技術・普及

背景・ねらい

河川・水路等に棲息するスクミリンゴガイは、産卵時には水中から護岸・岸壁等へ移動して親指大のピンク色の卵塊を産卵する。スクミリンゴガイ密度が高い河川や水路では夏季に水路岸壁がこの卵塊で覆われて著しく景観を損なうが、産卵抑制のための方法は確立していない。そこで、河川・水路等におけるスクミリンゴガイの産卵抑制技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • スクミリンゴガイ用忌避材は皮膜形成型樹脂と銅粉を混合したものである。皮膜形成型樹脂についてはD社ハードロックIIケタコート1を利用する。銅粉のサイズは直径約15μm、銅粉の混合割合は皮膜形成型樹脂の質量の20%である。
  • 忌避材の塗布方法は、最初に、岸壁に付着したゴミやスクミリンゴガイの卵塊等を除去する。次に、忌避材を安定的に塗布するための下地(プライマー:D社DK550-003)を塗布(200g/m2)する。最後に忌避材を塗布(皮膜形成型樹脂350g/m2+銅粉70g/m2)する。プライマーおよび忌避材はペイントローラーを利用すると簡単に塗布できる。
  • 忌避材の塗布によりスクミリンゴガイの産卵をほぼ抑制できる(表1図1上、図3)。また、水面と忌避材の間に隙間があるとその部分に産卵するため(図1下)、水面の変動などを考慮して、忌避材は最高水位より上(+20cm程度)から最低水位より下(~10cm程度)まで塗布することが望ましい(図2)。

成果の活用面・留意点

  • 本忌避材を利用して河川・水路等の岸壁におけるスクミリンゴガイの産卵を抑制できる。
  • 忌避材の効果はこれまでのところ少なくとも2年間は効果があることが確認されている。
  • 本忌避材はD社より市販化が予定されている。
  • 銅粉のサイズは、大きすぎると塗布作業中に沈殿するため、粒径20μm以下を推奨する。
  • 皮膜形成型樹脂の中には本方法を利用しても忌避効果の無いものがある。
  • 本忌避材を塗布した水路の用水の銅濃度について、2009年度の現地試験(図3)の水路の用水の調査においては、農業用水基準(Cu:0.02mg/L)を超える濃度は検出されていない(データ省略)。
  • 上記の皮膜形成型樹脂とプライマーは環境ホルモン物質「ビスフェノールA」および変異原生物質「ビスフェノールAジグリシジルエーテル(=エポキシ樹脂)」を含有しない環境に安全なアクリル樹脂系の材料である。

具体的データ

図1 卵塊の付着状況

図2 忌避材の塗布範囲

表1 卵塊密度

図3 現地試験の概要

その他

  • 研究課題名:地域条件を活かした高生産性水田・畑輪作のキーテクノロジーの開発と現地実証
  • 中課題整理番号:211k.8
  • 予算区分:基盤、委託プロ(担い手)
  • 研究期間:2005~2009年度
  • 研究担当者:田坂幸平、佐々木豊、土屋史紀、深見公一郎、遊佐陽一(奈良女子大)、安東敏弘(電気化学工業(株))
  • 発表論文等:田坂ら「スクミリンゴガイ用忌避材及びスクミリンゴガイの忌避方法」
                      特開2008-137959