メチオニン(アミノ酸)の土壌混和のネコブセンチュウ密度低減効果

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要約

アミノ酸の一種のメチオニンを土壌に混和すると、サツマイモネコブセンチュウの密度が顕著に低下する。また、トマトに対する線虫の寄生程度も下がり、トマトの生育が良くなる。メチオニン処理は、土壌中の物質循環などに有益な役割を果たす自活性線虫の密度への影響は少ない。

  • 担当:農業研究センター・プロジェクト研究第2チーム
  • 連絡先:0298-38-8840
  • 部会名:生産環境,総合研究
  • 専門:作物虫害
  • 対象:害虫
  • 分類:研究

背景・ねらい

1960年代を中心にアメリカ、イギリス等において、有害線虫や土壌病原菌の防除資材として、種々のアミノ酸の効果が試験されたが、コスト面から開発が断念された。近年、アミノ酸の生産コストが低下していることから、環境保全型農業における有害線虫防除技術の一つとして、メチオニンを対象に、ネコブセンチュウの防除効果を検討するとともに、自活性線虫の密度とトマトの生育への影響を調査する。

成果の内容・特徴

  • 60kg/10a相当のメチオニンを土壌に混和すると、処理1週間後から5週間後には、サツマイモネ コブセンチュウの密度は顕著に低下する( 図1 )。また、プラスチック・フィルムによるマルチ処理を想定したポリエチレン袋での密封処理 の効果は見られない。
  • メチオニンを混ぜた土壌で栽培したトマトの苗は、サツマイモネコブセンチュウの寄生が少な くなり、地上部の生育も良好となる( 図3 )。
  • メチオニンを土壌に混和しても、土壌中で物質循環に大きな役割を持つ自活性線虫の密度への 影響は少ない( 図2 )。
  • これらのことから、メチオニンは、有害線虫に対しては選択的に密度低減効果を持つが、標的 以外の生物への影響が少ない防除資材となる可能性がある。

成果の活用面・留意点

  • ネコブセンチュウ密度の低減効果は20kg/10a相当量から認められる。
  • 作用機構は不明であり、また、有害線虫に対する密度低下効果が低い事例もあることから、作 用機構と高い効果を安定的に発揮させる条件を明らかにする必要がある。
  • シストセンチュウやフザリウム等土壌病原菌に対して、リジン、フェニルアラニン等のアミノ 酸が抑制効果を持つと報告されており、これらについても再検討が必要である。
  • メチオニンに窒素が含まれることなどから、メチオニン施用に伴う窒素施肥量の削減の可能性 等土壌肥料面からの検討が必要である。

具体的データ

図1:土壌のメチオニン処理とネコブセンチュウ密度
図1:土壌のメチオニン処理とネコブセンチュウ密度

 

図2:土壌のメチオニン処理と自活性線虫密度
図2:土壌のメチオニン処理と自活性線虫密度

 

図3:土壌のメチオニン処理とトマトの生育及び線虫の寄生度
ゴール指数:線虫の寄生皆無を0、根全体が線虫の寄生によってこぶが連続した場合を100として表した線虫の寄生程度
図3:土壌のメチオニン処理とトマトの生育及び線虫の寄生度 ゴール指数:線虫の寄生皆無を0、根全体が線虫の寄生によってこぶが連続した場合を100として表した線虫の寄生程度
[試験条件]
土壌:黒ぼく土(茨城県谷和原村)1kg/ポット
作物:トマト(強力米寿)ポット当たり5粒
栽培:メチオニン・肥料を土壌に混和し、1週間後に芽出し種子を播種。25°C恒温(自然光の人工気象室)4週間。
ポット:1/10,000aプラスチックポット
施肥:高度化成(15-15-15)を160kg/10a相当、石灰を200kg/10a相当
メチオニン:0.6g/ポット(60kg/10a相当)
密封処理:メチオニン・肥料混和後、土壌をポリエチレン袋に入れて口を閉じる。
線虫分離:ベルマン法72時間処理3反復

 

[試験区の処理条件]
処理1:メチオニンなし、非密封。
2:メチオニンなし、密封。
3:メチオニン混和、非密封。
4:メチオニン混和、密封。

 

その他

  • 研究課題名:土壌線虫被害回避のための総合防除技術体系の策定
  • 予算区分 :地域総合研究
  • 研究期間 :平成10年度(平成9~13年度)