麦作で問題となるイネ科越年草の生育期における識別法

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要約

麦圃場で問題となるイネ科の越年型雑草と圃場周縁部に生育して問題となる外来牧草由来の草種は,幼植物から生育期にかけての葉耳,葉舌といった葉節部の形態によって識別できる。

  • 担当:農業研究センター・耕地利用部・畑雑草研究室(中央農業総合研究センター・耕地環境部・畑雑草研究室)
  • 連絡先: 0298-38-8426
  • 部会名: 作物生産
  • 専門: 雑草
  • 対象: 雑草類
  • 分類: 指導

背景・ねらい

関東・東海地域の麦作において近年,カラスムギやネズミムギ(イタリアンライグラス)が防除困難な雑草であり,その対策について各県から強く要望さ れている。周辺部を含む麦作圃場に生育する越年型のイネ科草種は全国的に種の数が多く,出穂期以前の識別は困難である。的確な診断と防除手段確立の資料と するため,幼植物における葉の形質による識別法を策定する。

成果の内容・特徴

  • 現地での確認ならびに関東東海地域におけるアンケート調査および既存の文献による知見を総合した結果,麦作で問題となるイネ科雑草にはスズメノテッポウ, スズメノカタビラといった従来から全国的に問題であった草種に加えて,寒地ではシバムギ,コヌカグサ(レッドトップ),オオスズメノカタビラ,温暖地では カラスムギ,ネズミムギ(イタリアンライグラス),イヌムギ,カズノコグサがある。
  • 麦圃場周囲の農道,法面にはネズミムギ(イタリアンライグラス),オニウシノケグサ(トールフェスク),オオアワガエリ(チモシー)といった緑化資材由来と考えられる外来牧草やカモジグサ類などの在来草種が生育し,それらはしばしば圃場の周縁部に侵入する。
  • 上記のイネ科草種はいずれも一年生または多年生で秋期に発生し,冬期に分蘖して春期~夏期に出穂するという越年型の生活史を持つ。そのため,幼植物が生育する冬期における麦類および上記草種について幼植物から生育期における葉身と葉鞘の形質に基づく検索表を作成した(図1,図2)。

成果の活用面・留意点

  • カラスムギ,ネズミムギをはじめとする麦作イネ科雑草の生育期における発生実態把握および防除試験の精度向上に活用される。
  • 4葉期以前の実生では,植物体が小さく肉眼での観察が難しいことと葉耳などの形質が未発達であるため,草種によっては同定が困難な場合がある。
  • 根に種子が残っている場合には,穎果の形態に基づいて同定を行えばより確実に同定できる。

具体的データ

 

図1:麦類および主要冬緑イネ科雑草幼植物の葉の形態による検索
図1:麦類および主要冬緑イネ科雑草幼植物の葉の形態による検索

 

図2:麦類および主要冬緑イネ科雑草の葉節部の形態(記号は図1を参照)
図2:麦類および主要冬緑イネ科雑草の葉節部の形態(記号は図1を参照)

 

その他

  • 研究課題名:麦作における強害イネ科雑草の発生実態と防除技術の確立
  • 予算区分:特別研究(麦緊急開発)
  • 研究期間:平成12年度(平成11~13年)