フィールドサーバによる気象データおよび作物画像の計測技術

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要約

フィールドサーバを用いて圃場で長期間、温度・湿度・PPFD(光合成有効光量子束密度)などの気象データを従来の気象ロボットとほぼ同じ精度で計測できる。また植物成長計測や病害虫診断に不可欠な高解像度な画像による定点観測及び画像データベース化を自動的に行うことができる。

  • キーワード:フィールドサーバ、インターネット、無線LAN、自動計測、デジタルカメラ
  • 担当:中央農研・農業情報研究部・モデリング研究室
  • 連絡先:電話029-838-7177、電子メールhirafuji@affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究、関東東海北陸・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

圃場モニタリング技術は農業生産の向上や食の安全性の確保などを行ううえで重要であり、長期にわたり安価で容易に計測できるシステムが望まれる。フィールドサーバは、センサ・コンピュータ・通信機能をモジュール化した小型モニタリングロボットであり、従来の気象計測装置に比べて安価で簡単に設置することができ、Ethernetポートなどの拡張機能も備えている。そこでフィールドサーバを用いた温度・湿度などの気象データの計測や高解像度のデジカメによる作物画像の収集を長期間安定的に行うモニタリング技術を開発する。

成果の内容・特徴

  • 通風ファンを取り付け、センサに風を送ると共にその風で内部のコンピュータを冷却することで、気温・湿度を正確に測ることができる。このフィールドサーバを各地に複数設置し、台風や猛暑などの種々な環境下で安定的に稼働することを通年運用テストで確認した。
  • フィールドサーバによる計測データを従来の気象観測ロボットと比較した結果、標準誤差は0.26と実用範囲において十分な性能を得ることが確認された(図1)。
  • Ethernet経由で操作が可能な高解像度デジタルカメラをフィールドサーバに接続することで、カメラ電源のon/off操作や300万画素クラスといった高解像度の画像による圃場計測をインターネット上から行うことができる(図2)。
  • 独自に開発した防暑・防塵ケースにデジタルカメラの電源の遠隔操作を行うアクチュエータ(ソレノイド)を付加し、フィールドサーバとデジタルカメラをEthernetケーブルで接続するだけで、デジタルカメラを改造することなく高温多湿の温室や野外で長期間にわたって撮影ができる(図3)。Ethernetケーブルのみでカメラへの電源供給、カメラの主電源のon/off制御、撮影画像の伝送を同時に行うため、圃場における設置作業は非常に容易である。

成果の活用面・留意点

  • 画像データは作物生育のモニタリングの他、作業日誌やトレーサビリティシステム、不法投棄防止のための監視、農作業事故の発見・警報などに活用できる。
  • 本圃場モニタリングシステムを構築するには、フィールドサーバ以外にスタートポイントとなる無線LANアクセスポイント、データ収集等を行う外部のサーバが必要である。
  • デジカメを付加する場合、フィールドサーバに消費電力に応じた電源を供給する必要がある。
  • フィールドサーバに接続するデジタルカメラは、撮影及び撮影画像の消去をEthernet経由で行うことができる機種(RDC-700i、D1Xなど)を用いること。
  • 静止画を動画に変換するソフト(AVIEDIT、Photoshopなど)で長期間の定点観測画像をアニメーション化できる

具体的データ

図1 既存の気象観測ロボットとフィールドサーバによる計測結果の比較

 

図2 デジカメによる高解像度画像の収集例図3 フィールドサーバとデジカメを 用いた圃場画像モニタリングシステム

その他

  • 研究課題名:超分散型圃場モニタリングシステムの設計と開発
  • 予算区分:協調システム、重点支援
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:平藤雅之、深津時広、木浦卓治、胡浩明