センサの劣化や寿命の低下を抑えるフィールドサーバ湿度計測手法

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要約

湿度センサを外気取り入れ口からフィールドサーバ内部に移設することで埃の付着や高湿度状態での使用を回避しセンサの劣化を減らすとともに、内部及び外気温度の計測値を用いることで従来と同様に外気の相対湿度を求めることができる。

  • キーワード:フィールドサーバ、湿度計測、長期運用
  • 担当:中央農研・フィールドモニタリング研究チーム
  • 連絡先:電話029-838-7177、電子メールfserver@zoushoku.narc.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

農業分野において湿度情報は葉の濡れ情報などと同様、病害や遅霜などの発生予察に大きく影響を与える項目であり、長期にわたる計測が望まれる。しかしながら野外にて長期にわたり湿度計測を行う場合、通風によって吸い込まれた埃がセンサの高分子膜に付着し、精度の低下や寿命の低下を招く。また霜や病害の高発生条件である高湿度状態での計測が重要であるにもかかわらず、湿度センサは一般に高湿度状態に弱い。
そこでフィールドサーバ(2001年度成果情報)で湿度計測を行う場合において、これまで外気取り入れ部に設置されていた湿度センサを装置内部に移動した利用法を考える。内部に移動することで、フィルタや内部発熱などの効果により埃の付着や高湿度状態での使用を回避できるとともに、外気の相対湿度は内部の温湿度や外気温度を用いて外気湿度を適切に推定することができる。

成果の内容・特徴

  • 湿度センサをフィールドサーバ内部に設置することで、装置内部を通過する空気はフィルタにより埃などがカットされる。更に電子機器の発熱により内部の相対湿度は常に外部に比べ低くなるため、外気取り入れ口に設置していた場合に比べセンサの劣化や寿命の低下を抑え、長期間の利用が行える(図1)。
  • 内部で計測された温度(Tin)、湿度(Hin)および外気の温度(Tout)の計測結果を基に、Tetensの実験式から水蒸気量一定の近似によって、外部の相対湿度(Hout)を Hin*10^( 7.5*( Tin/(237.3+Tin)-Tout/(237.3+Tout) ) )で推定することができる。
  • 求められた推定式と実際に計測された相対湿度を比較した結果、内部温度センサの分解能が0.5度の場合は±4%RH、分解能が1.0度の場合は±8%RH程度で一致する(図2)。ただし、複数のセンサ出力を用いて推定しているため、各センサに誤差が生じると大きく変動する(内部温度センサ1度で相対湿度が10%近く変動)。
  • 内部温度・湿度の較正は、作成された較正用Webアプリケーションに外気温湿度、内部温湿度の生データを入力することで容易に求めることができる(図3)。
  • エージェントプログラム(2003年度成果情報)と連動させることで、内部の温湿度や外気の温度結果から自動的に外気の相対湿度を利用者に示すことができる。

成果の活用面・留意点

  • 湿度センサを設置する内部の場所は、内部の発熱や空気の流れによる偏りが起こりにくい場所に設置する必要がある。
  • 外気の相対湿度の推定精度は内部の温湿度および外気の温度を計測しているセンサの分解能に影響するため、必要に応じて高分解能のセンサを利用する。
  • 較正用Webアプリケーション(外部非公開)やエージェントプログラムを利用する場合には、事前に担当者に連絡を取り、所定の手続きをする必要がある。
  • 本成果内容は現在特許申請中である。

具体的データ

図1.従来手法におけるセンサの配置(左)と本手法におけるセンサの配置(右)。従来手法では長期間使用すると湿度センサに汚れが付着する(下写真)。図3. 較正用Web アプリケーション

図2. 外気の相対湿度の推定結果(左)と分解能による誤差の変化(右)

その他

  • 研究課題名:フィールドサーバの高機能化と農作物栽培管理支援技術の開発
  • 課題ID:222-a
  • 予算区分:基盤研究費
  • 研究期間:2006~2010年度
  • 研究担当者:深津時広、平藤雅之、竹澤邦夫
  • 発表論文等:特許願2006-242499(2006.9.7)