用途にあわせて機能やデザインを選択できる新型フィールドサーバ

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要約

フィールドサーバのケース(筐体)、内部の基板、センサ等が完全にモジュール化され、BTO型 PCのように用途や予算にあわせて搭載機能や筐体構造を選択できる。筐体の強度が大幅に向上し、輸送時や農業機械の接触等の衝撃に耐えられる。

  • キーワード:フィールドサーバ、モニタリング、制御、BTO
  • 担当:中央農研・フィールドモニタリング研究チーム
  • 代表連絡先:電話029-838-7177、電子メールfserver@zoushoku.narc.affrc.go.jp
  • 区分:共通基盤・情報研究
  • 分類:技術・参考

背景・ねらい

フィールドサーバでモニタリングしたい対象は極めて多種多様であり、それらの全てに応えられるようにすると、サイズが大きくなり構造が複雑になる。その結果、故障しやすくコストが高くなるという問題がある。設置環境も多種多様であり、極端な低温(中国北部、ヒマラヤ)や高温(タイ、インド)による故障、輸送時の衝撃やココナッツの落下(ハワイ)による破損など様々なトラブルの発生が見られた。多機能化、耐久性向上、低コスト化、メインテナンス性向上を同時に図るため、1用途に応じて機能やデザインを選択できるアーキテクチャ、2機能を細かく遠隔制御できる計測用Webサーバ基板(フィールドサーバエンジン)の開発、3最適な部材の探索などを進めてきた。

成果の内容・特徴

  • 新型フィールドサーバは、センサ部(気温・湿度・土壌水分センサ等)、カメラ格納部等構成要素が全てモジュール化され、用途に応じて機能や構造を選択(あるいは変更)できる。フィールドサーバエンジン基板、無線LAN基板、電源・コネクタ基板等電子回路部も1つのモジュールになっている。各構成要素のモジュール化により、拡張性とメインテナンス性が向上した。また、部品点数を大幅に削減できるため、小ロット生産あるいは単品の特注でも低コスト化が実現可能である(1台10万~40万円程度)。
  • 筐体はフィールドサーバエンジンの基板サイズにあわせて小型化され(直径100mm)、必要に応じて上部に円盤形の拡張用筐体(直径200mm)を追加できる(図1、2)。これまでのフィールドサーバは接着が容易で試作しやすいアクリル樹脂を用いていたため、衝撃や熱応力に弱かった。新型フィールドサーバはポリカーボネイト樹脂製とし、堅牢かつ軽量になった。
  • フィールドサーバエンジンが生成する交流信号を用いると、樹体水分や土壌水分等を単純な構造の電極で計測できる(図3)。このようなセンサをフィールドサーバ設置用ポールの中に格納でき、ポールの周囲の土壌水分等を計測できる。
  • 気温、湿度、CO2濃度等のセンサを24個まで接続できる。また、小型PC、害虫カウンタ、デジタル一眼レフカメラ、サーボ等を筐体内に格納でき、オールインワン化が可能である。
  • モジュール化されたため、陶器製筐体((株)造形集団D・Oとの共同制作、図4)などに格納してデザイン性を向上させ、家庭用など用途の拡大も期待できる。

成果の活用面・留意点

  • ポリカーボネイト樹脂は堅牢であるが、衝撃の一部は内部のカメラ等に伝わるため、高所からの落下等、極端に大きな加速度を受けないようにする必要がある。
  • 気温の計測精度に関しては農業・環境研究・教育用には十分であるが気象庁検定を受けていないため、気象業務法で定められる気象観測データとしては扱わないこと。

具体的データ

図1 新型フィールドサーバの構成

図2 各要素をモジュール化。拡張やメンテが容易。

図3 樹体水分・環境計測用センサの設置例

図4 陶器製ケースへの格納が可能

その他

  • 研究課題名:フィールドサーバの高機能化と農作物栽培管理支援技術の開発
  • 中課題整理番号:222a
  • 予算区分:都市エリア、科振調、生物機能、交付金(高品質カンキツ)、日印国際共同
  • 研究期間:2004~2009年度
  • 研究担当者:平藤雅之、深津時広、世一秀雄、三木悠吾
  • 発表論文等:平藤、深津(2008)人工知能学会誌、23(4)、486-491