ニュートリゲノミクスデータのアーカイブ化と機能性評価への活用

要約

様々な食品成分の体への影響を明らかにするため、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現変化を網羅的に解析したニュートリゲノミクスデータは、他の食品成分の解析・評価にも極めて重要な情報である。そこで当該データをアーカイブ化し、Web上で公開する。

  • キーワード:DNAマイクロアレイ、ニュートリゲノミクス、機能性評価、アーカイブ、データベース
  • 担当:食品機能性・機能性評価標準化技術
  • 代表連絡先:電話 029-838-8041
  • 研究所名:食品総合研究所・食品機能研究領域、畜産草地研究所・畜産物研究領域
  • 分類:普及成果情報

背景・ねらい

ニュートリゲノミクスの手法であるDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の網羅解析によって様々な食品成分が体に与える影響を解析することで、一度に数万点の遺伝子発現変化に関する膨大なデータが得られる。これらのデータについて、様々な統計解析法を用いて生理的意味を抽出(マイニング)することで、食品成分の機能性を評価できるが、さらに、異なる解析法を用いる、あるいは特定の遺伝子群に着目すること等により新たな評価が可能である。そこで、ニュートリゲノミクスデータをアーカイブ化し、Web上で公開する。これによって、食品の機能性評価研究の発展を目指す。

成果の内容・特徴

  • 食品成分の機能性評価の研究において得られたニュートリゲノミクスデータを項目毎に整理し、アーカイブ化することで、当該データをサーバに蓄積し、必要な情報を検索できるデータベースを構築した。
  • 「実験詳細」のページでは、フラボノイドのケルセチンやイソフラボンおよびリグナンのセサミン等、9種類の食品成分の機能性について、食品成分に関する情報及び既存の報告、評価した機能性と用いた生体材料、実験結果の要約、実験方法及び文献情報を閲覧できる(図1)。また、「実験データダウンロード」のページからDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現の測定データをダウンロードすることが可能である。
  • 「実験データ解析」のページでは、遺伝子発現解析の結果として、解析法、及び実験動物が機能性成分を摂取することで生じる肝臓の遺伝子発現変化のデータを閲覧できる。これにより、特定の機能やキーワードで遺伝子を検索することができる(図2)。
  • また「検索」のページから、食品成分、DNAマイクロアレイ、測定プロトコール、機能性、生体材料、遺伝子名、遺伝子オントロジーでの検索が可能である。
  • このようなニュートリゲノミクスデータベースを公表することによって、アクセスした人が食品成分名を入力することで、これまでの知見、機能性評価法、遺伝子発現解析及びその他の評価結果に関する詳細な情報が得られ、検索した食品成分の機能性を利用した食品開発や新たな機能性の発見、さらには検索された評価法を用いて解析し、結果を比較すること等により異なる食品成分の機能性解明にも役立つことが期待される。このように、食品の機能性に関わる包括的なデータと遺伝子発現の詳細なデータから成るアーカイブは、アーカイブ化された食品成分の新たな仮説に基づく解析と評価に活用できるだけでなく、他の食品成分の機能性評価に応用することも可能である。

普及のための参考情報

  • 普及対象:食品機能性研究に関わる農学、医学、薬学等の研究者を対象とする。
  • 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:Web上でデータベースとして利用できるため全世界からアクセス、利用が可能である。
  • その他:公開するデータは随時追加する予定である。

具体的データ

 図1~2

その他

  • 中課題名:健康機能性に関する成分分析法及び評価法の開発と標準化
  • 中課題番号:310a0
  • 予算区分:交付金、委託プロ(食品プロ)
  • 研究期間:2008~2012年度
  • 研究担当者:小堀真珠子、高橋陽子、鈴木チセ
  • 発表論文等:ニュートリゲノミクス機能性評価データベースシステム、食品総合研究所 機能性評価技術ユニット他、2013年3月公開(http://foodfunction.dc.affrc.go.jp)