制限修飾系SsuDAT1Iの菌種内での水平伝播と進化による多様化

要約

Streptococcus suis血清型2型の野外株に見出された外来性の制限修飾系SsuDAT1Iと同じ特異性を有する制限修飾系の遺伝子が,血清型1/2型の野外株と3, 7, 23及び26型の参照株で ,染色体上の同じ座位に見つかった。その塩基配列は,1/2, 3, 7, 及び23型で2型のそれと極めて似ていたのに対し,26型ではやや異なっていた。これらの成績は,SsuDAT1I遺伝子のS. suis菌種内での相同組換えによる水平伝播と ,進化の過程での多様化を示している。

  • キーワード:制限修飾系,Streptococcus suis,水平伝播,進化,多様化
  • 担当:動衛研・感染病研究部・病原細菌研究室
  • 連絡先:0298-38-7743
  • 区分:動物衛生
  • 分類:科学・参考

背景・ねらい

Streptococcus suisに見出された制限修飾遺伝子SsuDAT1Iは,外来性遺伝子であるが(家畜衛生研究成果情報No. 14, p. 27-28, 2001, J. Bacteriol. 183:500-511, 2001.) ,これがS. suisの菌株間でも水平伝播していたかを調べ,その遺伝子伝播のメカニズムを推定した。

成果の内容・特徴

  • 血清型1~28型の参照株と血清型1/2型の野外株計29株を用いて,それらのゲノムDNAの制限酵素MboI及びDpnIに対する感受性と菌抽出液中の制限酵素活性を調べたところ ,血清型3, 7, 23及び26型の参照株と1/2型の野外株に,SsuDAT1Iと同様な制限修飾活性を認めた。
  • 菌のゲノムDNAを用いて,SsuDAT1I遺伝子をプローブとしたゲノムサザンハイブリダイゼーション (図1) 及びSsuDAT1I遺伝子の配列をもとにしたPCR (図2) を行ったところ ,上記5株にSsuDAT1Iと同様な制限修飾遺伝子の存在を認めた。
  • PCRで増幅した断片の塩基配列を決定したところ,SsuDAT1I遺伝子と同様,いずれも染色体上purHpurDの間の同じ座位に存在しており ,周辺には転移因子や長い繰り返し配列は見られなかった。
  • 血清型1/2, 3, 7, 及び23型の制限修飾遺伝子は,SsuDAT1Iと非常に良く似ていたのに対し,26型のそれはやや異なっていた。
  • これらの株は,系統的に近縁でないことが示されており,それらの制限修飾遺伝子が染色体上の同じ座位に存在し,かつ,ほぼ同じ構造的特徴を有したことは,SsuDAT1I遺伝子の他の菌からの取り込みは非相同的組換えにより起こり,S. suis菌種内での水平伝播は周辺の遺伝子を伴った相同組換えにより起こったことを強く示唆する。また,26型の制限修飾遺伝子とその他との差異は,S. suisに取り込まれた後の ,進化の過程での変化を示すものである(図3)。

成果の活用面・留意点

  • SsuDAT1I遺伝子が,これまで知られていないメカニズムによる非相同的組換えによって,S. suis染色体に組み込まれたことがより確実となった。
  • 非相同的組換えにより取り込まれた外来遺伝子が,その後,相同組換えによって同一菌種内で水平伝播するという,制限修飾遺伝子獲得と拡散の様式が明らかになった。
  • 血清型26型の遺伝子に見られた差異は,制限修飾遺伝子の進化の過程での多様化を考える上で重要な知見となる。

具体的データ

図1 SsuDATI領域(3,503bp)をprobeとしたサザンハイブリダイゼーション

 

図2 制限修飾遺伝子数領域のPCR

 

図3 制限修飾遺伝子の水平伝播の過程

 

その他

  • 研究課題名:制限修飾遺伝子SsuDAT1Iの転移能とゲノム改変に及ぼす影響の解析
  • 予算区分:パイオニア(制限修飾遺伝子)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:関崎 勉,大崎慎人,高松大輔
  • 発表論文等:Sekizaki et al. (2001) J. Bacteriol. 183:5436-5440.