組換え口蹄疫ウイルス非構造蛋白質を抗原とする口蹄疫抗体識別検査法

要約

バキュロウイルスを用いて発現した複数の口蹄疫ウイルス非構造蛋白質は、抗体検出用抗原としてそれらを単独又は組み合わせて用いることにより、感染牛の抗体検出が可能で、さらに高い精度で感染抗体とワクチン抗体の識別が可能である。

背景・ねらい

口蹄疫発生時に緊急ワクチン接種を実施した場合、現在世界で用いられている標準抗体検査法ではワクチン接種動物と自然感染動物を識別できない。また、口蹄疫ウイルスの全タイプに対する抗体検出用抗原はわが国では入手が困難である。そこで、感染動物のみに検出される口蹄疫ウイルスの非構造蛋白質に対する抗体に着目して、口蹄疫ウイルス非構造蛋白質をバキュロウイルスで発現し、これを抗原とする感染抗体の識別が可能な抗体検出法を開発する。

成果の内容・特徴

  • 口蹄疫ウイルス非構造蛋白質をコードする全遺伝子領域(2A-3D)を2AB、2B、2C、3ABC、3Dの5種類に分けてバキュロウイルスで発現した。
  • 組換え3D蛋白質は、これを抗原とするゲル内沈降反応により、口蹄疫ウイルスの異なるタイプに対する牛標準血清並びに国内自然感染牛血清(タイプO)と特異的な反応を示した(図1)。
  • 上記5種類の発現非構造蛋白質のうち、2C、3ABC及び3D蛋白質は、ウエスタンブロット法により、各種口蹄疫標準陽性血清と特異的な反応を示した。
  • 2000年にわが国で発生した口蹄疫と同じウイルスによる発生があり、その防圧にワクチン接種を実施した韓国及び台湾の野外牛の血清を用いて、ウエスタンブロット法による野外自然感染牛とワクチン接種牛の識別を試みたところ、2C及び3ABC発現蛋白質の組み合わせ(15頭中11頭陽性)で検査頭数中約73%を識別することができた(表1)。

成果の活用面・留意点

  • バキュロウイルス発現系で作出した口蹄疫ウイルス非構造蛋白質を抗原とする抗体検出法は、2000年に日本で分離した口蹄疫ウイルスのように、典型的な症状を示さない症例の診断や、口蹄疫発生時の防疫にワクチンを使用した場合の自然感染牛の識別検査にきわめて有効である。
  • バキュロウイルス発現系で作製した抗体検出用抗原は、感染性の口蹄疫ウイルスを使用しないため、封じ込め施設を必要としない安全な抗原として、検疫検査に利用が可能である。また、ゲル内沈降反応への応用は、特殊な機器を要しないことから、簡易な臨床検査法として、発生現場や開発途上国等の口蹄疫常在国でも活用できる。

具体的データ

図1 ゲル内沈降反応によるバキュロウイルス発現非構造蛋白質(3D蛋白質)と 口蹄疫ウイルスの各種タイプとの反応性

 

表1 バキュロウイルス発現非構造蛋白質を用いたウエスタンブロット法による 自然感染牛とワクチン接種牛の識別

その他

  • 研究課題名:口蹄疫ウイルス非構造タンパク質のバキュロウイルスによる発現
  • 課題ID:13-03-01-*-06-03
  • 予算区分:交付金プロ/口蹄疫 (3020)
  • 研究期間:2001~2003年度
  • 研究担当者:坂本研一、大橋誠一、山川 睦、山添麗子
  • 発表論文等:1) Sakamoto et al. (2002) Rev. Sci. Tech. Off. Int. Epiz. 21(3):459-463.
                      2) 坂本ら (2005) 交付金プロジェクト「口蹄疫等の海外悪性伝染病の性状解明と
                          高度診断技術の開発」研究成果集 22-25.