農地の集団的保全を目的とする土地利用計画単位「農地管理区」

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要約

将来の再区画整理を可能とする技術条件を維持しながら、集団的・長期的に農地を保全するには新たな土地利用計画単位が必要であることを示し、これを「農地管理区」として提案した。農地管理区は区画整理技術と密接に関連する計画単位であり、1農道の整備水準、2施設の系統的配置、3農地転用の排除、3転用位置の自律的整序化などの地域形成機能をもつため、土地利用秩序化に対する有効性が高い。

  • 担当:農業工学研究所・農村整備部・地域計画研究室
  • 代表連絡先:0298-38-7548
  • 部会名:農業工学・総合農業
  • 専門:農村空間
  • 対象:計画・設計技術
  • 分類:行政

背景

構造政策の要求や都市的土地需要が高い中で、食糧の生産条件を保持するため、農地保全の必要性は高い。農地保全にとって面積確保は第一に重要な事項だが、生産の場としての機能性・団地性などの質的・物的条件も同時に満たさなければならない。農地の量的・質的条件を一体的・長期的に保全するための条件は,1将来の再区画整理に対応できる圃場を形成・維持すること、2無秩序な開発を制御し農地の団地性を維持することであるが、これには,耕地の区画整理技術を基礎とする土地利用技術の体系化が不可欠である。

成果の内容・特徴

将来の再区画整理を見込んで農地を計画的に保全するための地域単位として「農地管理区(図-1)」を提案した。これまでの研究で示したように、再区画整理を将来も実施するには、現況圃場は「道路抜き工法型等高線区画(図-2)」で整備されている必要がある。同圃場システムでは、従来のシステムと異なり、区画相互は圃区・農区を越えて有機的関連性をもっているため、再区画整理が可能となる。しかし、これを支障なく適用するには、複数農区に跨り、連続的で一定の広がりをもつ農地集団を計画単位として画定する必要がある。これが「農地管理区」で、将来の再編を行う計画単位地域となる。農地管理区の形状・範囲は地域条件等によって変形するが、農地保全機能のはか、以下のような地域空間を積極的に形成し、土地利用を秩序化する機能(地域形成機能)をもつ。
農道の整備水準の規定: 農地管理区の農道(管理区農道)の階層構成は再編計画によって明確に位置づけられ、整備水準もこれに応じて決まる。幹線農道は圃場システムの再編の中でも原則的に廃止されず、支線農道は保全度の低いものから順次廃止される。
施設の系統的配置: 近年関心が高い畦畔の除草作業でも、電柱などの付帯施設の位置等が機械化の大きな障害となっている。農地管理区の設定による幹線管理区農道の明示によって,付帯施設を規則的に配置すれば、除草の機械化は容易になる。
農地転用の排除: 農地転用をが区域内で進めば道路抜き工法型等高線区画の一体的適用はできないため、転用の排除が不可欠の条件となる。こうした、転用に対する排除則は、農地管理区の存続の前提条件である。
農地転用の自律的整序化: 農地転用を容認する際にも、区画相互の有機的関連性に基づく内的基準によって、転用位置の評価・誘導が可能である(図一3)。従来の農地法、農振法等による農地保全は都市開発に対して受身で、土地利用秩序化機能に課題を残していたが、農地管理区の設定によって自律的な整序化が可能となるのである。

成果の活用面・留意点

需要先:国、市町村、都道府県、計画コンサルタント
期待される活用面: 1土地利用誘導のための農振法等の運用指針、2行政参考資料
留意点:現段階はアイデアの域を越えず、現場との連係による技術深化が不可欠。

具体的データ

図1 農地管理区の模式と区画の再編イメージ
図2 道路抜き工法型等高線区画
図3 農地管理区における農地転用の序列化のイメージ

その他

  • 研究課題名:農村地域活性化のための広域的農村整備手法の開発
  • 予算区分:経常・依頼(構造改善局)
  • 研究期間:平成3~8年度
  • 研究担当者:有田博之, 友正達美(農工研);木村和弘(信州大学)
  • 発表論文等:「農地管理区を単位とする優良農地の長期的保全手法の提案」
    (有田・友正・木村、農業土木学会論文集/投稿中)